「夢前夢工房」の衣笠愛之さんがビニールハウスで栽培するワサビ=姫路市夢前町宮置
「夢前夢工房」の衣笠愛之さんがビニールハウスで栽培するワサビ=姫路市夢前町宮置

 農産品販売などを手がける有限会社「夢前夢工房」(姫路市夢前町宮置)が、昨秋からワサビの栽培に取り組んでいる。「姫路わさび」と名付け、同社が運営する農業体験施設「夢やかた」(同町神種)で販売。粉末状に加工し、海外向けに輸出する計画も進む。(成 将希)

 同社は、米や野菜の生産・販売のほか、夢前町の特産「夢そば」に使われるそば粉の加工販売、レストラン運営などを手がける。

 「ワサビ栽培は会社設立当初からの悲願だった」と、代表の衣笠愛之さん(63)は話す。そばに合うワサビを作ろうと、さまざまな方法を試したが、どれもうまくいかなかったという。

 そこで昨秋から導入したのが、ワサビの根に機械を使って霧状の養液を吹きかける方法。トマト栽培などで実用化されているが、ワサビに用いるのは全国的にも珍しいという。

 室温20度ほどに保たれたビニールハウス内で、長さ25メートルある中が空洞の栽培箱に、ワサビを一株ずつ差し込む。後は自動でノズルから養液が噴出されるため、人の手はそれほどかからない。余った養液は浄化装置へ送られ、再利用される。

 同社は、高級品種「真妻」など、4品種計約4千本を栽培。今月中旬には、茎は45センチほどまで成長し、葉は大人の手のひらほどの大きさになった。かじると青臭さもなく、心地よい辛みが遅れて鼻を抜けていく。

 葉や茎は5月末まで「夢やかた」で販売する。また、神戸北野ホテル(神戸市中央区)や、姫路市内の和食店で試食してもらい、飲食店向けに適した品種を探っているという。

 冬には根茎の部分を収穫する予定。海外のフレンチレストラン向けに粉末状に加工し、出荷する計画もあるという。

 衣笠さんは「姫路の新たな特産品になるよう、1~2年かけて栽培手法を確立したい」と意気込む。