神戸新聞NEXT
神戸新聞NEXT

 心臓手術で胸の真ん中を大きく切開する従来の方法と異なり、小さな傷で済む低侵襲心臓手術「MICS(ミックス)」が注目を浴びている。北播磨総合医療センター(兵庫県小野市市場町)は内視鏡を使って安全性を高めたMICSを2021年に導入した。手術症例数が急増し、23年は91件と兵庫県内で1位。全国でも有数の多さという。一体、どんな手術なのだろう?(坂本 勝)

 傷が小さくて済む小切開手術は1990年代に幕が開け、日本でも四半世紀の歴史がある。現在では3D内視鏡を切開部に入れ、大きく映し出した画面を見ながらの手術もできるようになった。

 MICSは患者の体の負担が小さい▽手術痕が目立ちにくい▽退院や社会復帰が早い-などの長所がある。一方で弁膜症手術では人工心肺装置を使い、心臓を止める時間が長くなる傾向がある▽手術には経験や技術が必要▽心臓の機能が低下したり、動脈硬化が進んだりした患者には適さない-といった短所もある。

 北播磨総合医療センターのMICSは、骨の間の切開部を開く機器を原則として使わない。傷口は4センチ程度、入院は7~10日間で術後の痛み止めもほぼ不要だという。

 同センターはMICSを16年に始め、23年までに181件(僧帽弁104件、冠動脈バイパス39件、大動脈弁置換29件、その他9件)の手術をした。23年には心臓切開手術の160件中、MICSの割合が57%にまで増え、僧帽弁に限ると58件中、91%を占めている。

 MICSを担当する山田章貴(あきとし)部長(51)は第一人者である名古屋第一赤十字病院の伊藤敏明部長から手技を学んだ。三木、小野市民病院が統合した同センターで三木市民病院時代から在籍する山田さんは「体の負担が軽く、痛みが少ないMICSを北播磨で受けられることを大勢の人に知ってほしい。安全性に細心の注意を払いながら慎重に実践を重ねて若手の指導もしていきたい」と話す。

 同センターはホームページでMICSについて説明している。同センターTEL0794・88・8800