車窓から望む空が夕日に染まる頃、列車内にリーン、リーンと涼やかな虫の音が響く。加西市と小野市を結ぶ北条鉄道(加西市)が、例年この時期に走らせる「スズムシ列車」だ。その発案者で、スズムシを育ててきた小林桂さん(79)=同市田原町=が引退を決めた。「お客さんから『音色に癒やされた』と言ってもらうことが励みだった」。市内の幼稚園や神戸新聞の「スズムシ学校」などにもスズムシを提供し、多くの人々を笑顔にしてきた小林さんは語る。(敏蔭潤子)
スズムシ列車はスズムシを入れた飼育箱を、列車の網棚に載せて走らせる企画。同鉄道は専用のヘッドマークも用意するなどし、風情ある鉄道の旅を乗客に提供してきた。