右の羽が雌、左の羽が雄のものという珍しいスズムシが、兵庫県多可町の主婦藤本緑さん(64)宅で見つかった。雌雄型(雌雄モザイク)といい、昆虫類ではまれに生じ、10万~20万匹に1匹ほどの個体という。藤本さんが岡山県の倉敷市立自然史博物館に連絡し、雌雄型と確認された。同館へ寄贈する予定という。(金井恒幸)
藤本さんは2000年、知人から10匹のスズムシをもらい、飼うようになった。順調に増え、6年ほど後から多可町内の小学校への寄贈を始めた。今では、同町と西脇市の小学校に寄贈を続ける「鈴虫のおばちゃん」だ。
2014年には今回と同様に、右の羽が雌、左の羽が雄で、針のような産卵管がある雌雄型を発見。18年には、産卵管や雄の羽がある個体も確認した。いずれも同館に寄贈したという。
今回は8月14日の昼ごろ、「何か形がおかしいのがいる」と気付いた。14年の雌雄型と比べると今回は産卵管がなく、「初めてのパターン」と驚いたという。同月末、写真を添えて同博物館へ連絡した。産卵管がないので雄の性質があるとみられるが、羽の形は雌雄両方のため、羽を広げて鳴くことはできないという。
スズムシは体長数ミリで生まれ、脱皮を経て成長する。藤本さんは脱皮を終えて白くなった成虫が黒くなっていくのを見るたび、生きものの神秘を感じるという。「スズムシの鳴き声には心が癒やされる。小学生が楽しみに待ってくれているので、できる限り長く飼育を続けたい」と話す。