のじぎく賞と感謝状を受け取った西子貞雄さん=神戸市中央区波止場町
のじぎく賞と感謝状を受け取った西子貞雄さん=神戸市中央区波止場町

 海に転落した男性を救助したとして、兵庫県警神戸水上署と水上消防署は、観光遊覧船「bohboh(ボーボー)KOBE」の機関長、西子貞雄さん(65)に同県の善行賞「のじぎく賞」と感謝状を贈呈した。船員として45年以上勤務する西子さんは、海上で培った知識と経験を生かし男性を救った。(大高 碧)

「人が海に落ちた」浮輪2個抱え近寄る 

 神戸水上署や西子さんによると、7月13日午後4時15分ごろ、西子さんが夕方の運航に向けて、神戸港の中突堤中央ターミナル「かもめりあ」(神戸市中央区)で作業をしていると、船員から無線が入った。

 「人が海に落ちている」

 すぐに現場にかけつけると、大柄な男性が海中に転落していた。すでに救命浮輪が投げ込まれていたが、男性は今にも沈みそうな状態だった。

 とっさに着ていたジャケットを脱ぎ捨て、軽装で海に飛びこんだ西子さん。浮輪2個を脇に抱えて男性に近寄った。水難事故では、助けを求める人が救助者に抱きつき、溺れるケースがあるため、西子さんは冷静に男性の後ろに回った。

 「とにかく息の確保を」。男性の首の辺りに腕を回して気道を確保できた。ただ、周囲は海面から「3メートルほど」の岸壁のため、引き上げられない。西子さんは意識のない男性を抱え、約10分間に渡って声をかけ続けた。到着した県警と消防のダイバーに引き渡し、無事救助できた。

 これまで大型船などをサポートするタグボートの船員などとして、半世紀近く海の仕事に携わってきた西子さん。過去にも転落した人の救助に加わったこともあったといい、救助訓練なども積み重ねてきた。

 後日、西子さんの元に男性の妻から男性が意識を取り戻したと連絡があった。西子さんは「助かったと聞いた時はホッとしました」とほほ笑み、「長い間、海で勤務する身として体が自然に動いた」と当時を振り返った。

 救助には複数の船員の協力もあったといい、のじぎく賞と感謝状を受け取った西子さんは「救助に当たった乗組員みんなが賞に値する」と語った。