人命救助に貢献し、斉藤賢治・東灘消防署長(左端)と森井忠・東灘警察署長(右端)から賞状を受け取った重宮啓史さん(右から2人目)と高田直也さん=東灘消防署
人命救助に貢献し、斉藤賢治・東灘消防署長(左端)と森井忠・東灘警察署長(右端)から賞状を受け取った重宮啓史さん(右から2人目)と高田直也さん=東灘消防署

 1月中旬の夜、兵庫県神戸市東灘区深江南町の岸壁から海に転落した30代の男性を、地元の運送会社に勤める社員2人が、フォークリフトと脚立を組み合わせて引き上げた。暗闇と冷気に包まれた現場で、あり合わせの機材を使って男性の命を救った機転をたたえ、県と消防が表彰した。(岩崎昂志)

 救助に関わったのは、神戸市北区の重宮啓史さん(46)と同市兵庫区の高田直也さん(44)。2人とも、現場近くにある運送会社「立脇高速運輸」の社員で大型トラックを運転している。

 1月16日午後8時20分ごろ、海沿いの車庫で帰り支度をしていた重宮さんが「助けて」という叫び声を聞いた。岸壁から暗い海をのぞくと、水面に浮かぶ男性を発見。近くに停泊していた船のロープや浮輪を投げ込んだ。

 「頑張れよ」「絶対に助かるからな」。必死で浮輪をたぐり寄せる男性を、無我夢中で励まし続ける。

 トラックの洗車中だった高田さんも駆けつけてきた。引き上げる手だてを考えていると、職場のフォークリフトと脚立が目に入った。

 その時、テレビで以前見たドキュメンタリー番組が浮かんだという。「太平洋戦争中、旧日本海軍の軍艦が、漂流する敵国兵を魚雷用のクレーンで救助する場面を思い出した」

 高田さんは、職場でフォークリフトを使っており、操作に慣れていた。脚立をはしご状に延ばし、フォークリフトの爪に外れないように引っかけると、海面へと下ろした。

 男性が脚立につかまったのを確認して引き上げ、陸地へ移す。震えてうずくまる男性。岸壁を歩いていて誤って転落したといい、間もなく到着した救急隊が、病院に搬送して無事に回復した。

 東灘消防署によると、真冬の海で体温が急激に低下し、時間が経過するほど生命の危険もあったとする。迅速な対応で救出した2人に対し、県は善行賞「のじぎく賞」を、署は署長感謝状をそれぞれ贈った。

 今月15日、署であった贈呈式で、「機転を利かせた勇敢かつ献身的な功績」とたたえられた2人。重宮さんは「本当に助かって良かった」と大きく息をつき、高田さんは「人間として、できることをやれた」と話した。