徹夜で仕上げたベーグルと川原未来さん。毎回16種類用意する=神戸市北区筑紫が丘4
徹夜で仕上げたベーグルと川原未来さん。毎回16種類用意する=神戸市北区筑紫が丘4

 ニース風サラダ、チキンの香草焼き、ベリー赤ワインショコラ…。高級レストランのコース料理ではない。兵庫県神戸市北区筑紫が丘の住宅街にあるベーグル店のメニューだ。あふれるほどの具が詰まっていて、1個400円未満。「財布にやさしく、満腹になってほしいから」と笑う店主の川原未来さん(28)は、下半身の感覚がない障害者。自らの社会復帰のためと位置付け、もうけを度外視した店は、22日でオープン1年となる。(今泉欣也)

ボリューム満点、1個400円未満 

 同市垂水区出身の川原さんは高校卒業後、専門学校を経て夢だった美容師に。市内のヘアサロンに就職して3年目、自宅で突然両脚がつったような状態になった。

 徐々に力が入らなくなって救急搬送され、精密検査の結果は「脊髄出血」。奇形の血管が原因で、運動機能や感覚に障害を引き起こす。医師からは「もう歩けないかも」と告げられた。

 家族が号泣する中で、川原さんは冷静に受け止めた。リハビリで症状が改善する可能性があると知り、「私、歩くから」と、西区の県立リハビリテーション中央病院や自立生活訓練センターで懸命に努力した。へそから下の感覚は戻らなかったが、1年半後の退所時には介助なしで自立歩行できるようになった。

 店を持つきっかけは、社会復帰に向けて仕事を探す傍ら、家族の勧めで始めた料理だった。体のことを忘れて没頭。自宅1階の和室を店舗兼調理場に改装して昨年8月、ベーグルと焼き菓子の店「ulunookurimono(ウルノオクリモノ)」をオープンした。

 毎週火、木、土曜に開店し、ベーグルは具のない4種類と食事系、スイーツ系の各6種類を販売。自分が食べたい料理やひらめきで決めるため、メニューは毎回異なり、徹夜で200個超を仕上げるという。地域に高齢者が多いことも考慮し、生地の軟らかさや食材にもこだわる。

 川原さんの明るい人柄が評判となり、毎週加古川や明石から通う常連のほか、交流サイト(SNS)を見て県外から訪れる人も。食べ応えも十分で、昨今の物価高で「値上げしたら?」と心配されることもあるが、するつもりはない。「もうけるために店をやっていない。障害があっても自立できる、やりたいことができるってところを見せたいから」

 オープンから間もなく1年。目下の目標は、独立した店を持つこと。「実はフルマラソンも出てみたい」と、週1回のリハビリを欠かさない。

 午前10時開店。詳細は店のインスタグラムへ。