静岡県牧之原市と吉田町で9月、台風に伴う国内最強クラスの竜巻が発生し、死者や重軽傷者が出た。竜巻やダウンバーストなどの突風は夏から秋に多いが、過去には真冬にも起きている。気象庁が出す「竜巻注意情報」をよく理解し、いざというときに身を守る手だてを覚えておく必要がある。(上田勇紀)
■静岡に国内最強級、394棟が全半壊
頑丈な建物、窓のない1階に避難を
最強クラスの竜巻が静岡県中部の沿岸市町で確認されたのは9月5日午後0時50分ごろだった。推定風速約75メートルで、店舗の外壁が飛散したり、電柱が折れたりした。吉田町では車が横転し、乗っていた50代男性が死亡した。
このとき、台風15号が太平洋沿岸を通過。大雨による被害を含めて静岡県で88人が重軽傷を負い、394棟の家屋が全半壊した(10月末時点)。
この竜巻は、強さを分類する「日本版改良藤田スケール」で6段階のうち上から3番目の「JEF3」に該当。気象庁が同スケールを導入した2016年以降で最強クラスとなった。

同庁の聞き取り調査では「突風はごく短時間(1分程度)だった」という。災害救助法が適用され、借り上げ型仮設住宅の提供など生活再建支援が本格化している。
同庁は、静岡県に5日朝から繰り返し「竜巻注意情報」を発表し、対策を呼びかけたが、被害は防げなかった。この情報は大気の安定度や気象レーダー観測からはじき出した「突風危険指数」などを基に発表。積乱雲に伴う強い上昇気流で激しい渦巻きが起こる竜巻だけでなく、積乱雲から強い気流が吹き下ろす「ダウンバースト」や、冷暖の空気が衝突して起こる「ガストフロント」も対象で、1時間先までの激しい突風に注意を促す。

通常、突風の被害範囲は狭く、情報が出たからといって必ず遭遇するわけではない。同庁によると、空が突然暗くなる▽冷たい空気が流れる▽ひょうが降る▽雷が鳴る-といった前兆がある場合は、早急に頑丈な建物に避難する必要がある。車やプレハブの中にいても危険で、屋内では窓のない1階の部屋に移動するなどの対応が急がれる。

1991年1月~2025年9月までの突風発生確認数は全国で815件。7~10月が94~159件と多いが、11月は51件、12月も33件あった。晩秋から冬にかけても油断はできない。

■兵庫県内、過去に竜巻3件確認 丹波篠山では重軽傷者も
兵庫県内では、気象庁の記録がある1961年以降、陸上で3件の竜巻が確認された。

気象庁のデータベースなどによると、75年12月22日正午ごろ、津名郡一宮町(現淡路市)で発生し、家屋5件が半壊。2013年8月23日午後6時半ごろには、篠山市(現丹波篠山市)今田町であり、男性2人が重軽傷を負った。家屋の一部損壊は18世帯に上り、被害範囲は今田町内の東西約4・5キロ、南北約300メートルに及んだ。
15年9月4日午前6時半ごろには、南あわじ市の湊地区から松帆西路地区にかけて竜巻被害に見舞われた。民家の屋根瓦約20枚が落ち、湊港では漁具を入れる木箱が壊れるなどした。
ダウンバーストやガストフロントの発生は、同じく県内の陸上で02~14年に4件。いずれも太平洋沿岸の静岡県や茨城県などと比べると少ないが、気象庁の担当者は「気象情報や空の様子をこまめにチェックしてほしい」と呼びかける。
























