■自律性高める労働形態を
2020年初め頃からの新型コロナウイルスのまん延により、世界中で多くの人々がテレワークを余儀なくされました。日本でも同様に、テレワークを利用した働き方が普及していきました。
テレワーク自体は突然始まったものではなく、2000年頃から少子高齢化対策や働き方改革の一環として政策的に推進されていました。ただ、図に示しているように多少の増減はあったにもかかわらず、その企業導入率やテレワーカー率は低くとどまっていました。ところがコロナ禍により、それらの値は一気に増加することになりました。
テレワークの導入に関して、そのメリットとデメリットにはさまざまなものが存在するとされています。特にコロナ禍で導入されたテレワークは半強制的なものであったため、慣れない在宅勤務のストレスや、上司・部下・同僚と対面で業務ができないことに由来する疎外感がワーカーのモチベーション低下につながるというデメリットが指摘されています。一方、テレワークは自由に働くことができることから、ワーカーの自律性が高まり、それがモチベーション向上につながるという考えもあります。
筆者は長年にわたってその関係についてアンケート調査を行っており、テレワークの導入自体はモチベーション向上には貢献せず、それを向上させるためには、基本的には以前から効果があると考えられているモチベーション向上のための諸施策の実施がまず有効であることを確認しています。
具体的には、ワーカーの学習機会を充実させ、コミュニケーションの活性化や自律性向上を促し、疎外感を抑制するための諸施策を実施することがよりモチベーション向上につながるのです。ただ、コロナ以降の調査では、テレワーク導入企業で働くワーカーのモチベーションが高いという結果となっています。これは基本的な感染対策さえできない企業でワーカーは働きたくないということなのでしょう。
日本ではテレワークをフルタイムの在宅勤務と考えている方が多いですが、各省庁の定義によりますと、働く場所と時間は限定されていません。多くの方がテレワークという柔軟な働き方を経験した今日、ワーケーションや副業、兼業などテレワークと相性のいい働き方をより一層推進し、ワーカーの自律性を高める労働形態を許容していけば、ワーカーのモチベーション向上を達成できると筆者は考えています。
























