2回、アンソニー・オラスクアガ選手(左)のパンチをよける加納陸選手=両国国技館
2回、アンソニー・オラスクアガ選手(左)のパンチをよける加納陸選手=両国国技館

 強烈な一撃に沈んだ。20日、東京・両国国技館であった世界ボクシング機構(WBO)フライ級王座決定戦。大成ジム(三田市中町)所属で川西市出身の加納陸選手(26)が8年ぶりの世界戦に臨んだが、3回KO負けした。地元であった観戦会で声援を送ったファンらは「夢をありがとう」とねぎらい、拍手を送った。(橋本 薫)

 観戦会は、加納選手が年に数回訪れる「焼肉すとろんぐ」(川西市鼓が滝1)のオーナー、中田達也さん(46)が企画した。近隣の飲食店にも呼びかけ、計8店舗で開かれたという。

 加納選手の名前が呼ばれると、赤いタオルを掲げたファンらが「よっしゃ、いったれ」とムードを高めた。対戦相手のアンソニー・オラスクアガ選手(25)=米国=はパンチ力が武器の難敵。予想通り1回から打ち合いになり、加納選手は劣勢に立たされた。

 それでも3回、鋭いパンチを立て続けに浴びせ、店内は「いけいけ」と熱量を上げた。だが、次の瞬間だった。右フックで右のガードを外され、左アッパーをもろにくらった。加納選手はあおむけに崩れ落ち、ファンらは悲鳴を上げた。

 前日、中田さんのLINE(ライン)には、計量をパスした加納選手から「世界チャンピオンになります!」と連絡があった。中田さんは「一緒に夢を見させてもらった。帰ってきたら温かく迎えたい。相手がめちゃくちゃ強かった」と悔しさをにじませながらねぎらった。

 加納選手は同市立東谷中学2年でジムに入門し、丸元大成会長(48)と二人三脚で取り組んできた。一気に階段を駆け上がり、18歳の時にミニマム級で世界初挑戦したが、負傷判定負け。それでも減量苦による転級や苦戦を重ねながらランキングを上げ、8年ぶりの世界舞台にたどり着いた。

 中田さんと小中高の同級生の越田謙治郎川西市長(46)も店を訪れ、「長い苦労が報われたらうれしい」と祈っていた。壮絶なKO負けに言葉を失いつつ、「ここに至るプロセスがすごい。胸を張って帰ってきて、新たなチャレンジに向けて頑張ってほしい」と勇姿を目に焼き付けていた。

 同市のネイリスト矢田孝枝さん(40)は「血のにじむような努力をしてきたと聞いている。絶対に勝ってほしかったけど、うるうるして興奮もした。川西の宝、ありがとう」と、再び世界に挑む日を願っていた。