■身近な社会と世界をつなぐ
「平和を創る」と聞いてどんなことを思い浮かべますか。ガザやウクライナで続く紛争を解決することや、予防することを思う人が多いのではないでしょうか。紛争地では、市民が殺されたり、病院が破壊されたりという大きな暴力が起こっています。
そして、暴力は紛争地にとどまりません。人を傷つけたり、SNSを使って攻撃したりするなどは、身近な社会で起こっています。また、特定の人々が十分な教育や医療を受けられない状況や、能力があっても希望する職業に応募すらできない状況も、暴力といえます。
このように、社会現象としてみられる暴力の背景にある制度や文化に目を向け、暴力について考えを広めた人がいます。「平和学の父」と呼ばれるガルトゥング博士です。
例えば、移住してきたばかりの生徒にとっては、日本語で行われる授業の内容を理解するのは難しいでしょう。同じ仕事をしても、性別や年齢で賃金が違っていれば、収入格差が生まれます。また、自分たちは〇〇人より偉いとか、女性は控えめな方が美しいという考え方が、一部の人の生きづらさや排除につながります。このように、暴力には「構造的」な側面と「文化的」な側面があります。
このように見ると、暴力をなくし平和をつくるということは、私たちの身近なところで取り組むことができると言えるでしょう。
ただ、現実には簡単ではありません。「一人だけ考え方の違う人がいると、少しやりにくいなあ」と思うことはありませんか。また、職場や学校で男女の平等を求めていながら、日常生活では強い男性、優しい女性に憧れていることもありませんか。
私たちの研究室では、個人の持つ不完全さを認識しつつ、平和をつくる生き方を探索しています。「主体性を育む平和教育」「働く母親のジェンダー観」「外国人従業員の活用と企業の活性化」「難民のレジリエンス」など、身近な社会と世界をつなげる研究に取り組んでいます。