有馬温泉の新年は、1月2日に開催される入初(いりぞめ)式から始まります。
入初式は、有馬の恩人である行基菩薩(ぼさつ)と仁西上人に初湯を供える行事です。
有馬の妙見寺に1755年の入初式の記録が残っています。大みそかから元日にかけて僧侶たちが「羅漢講式」という法要を行っていました。一の湯、二の湯の湯口に正月飾りを施し、元日の昼ごろには、御所坊四郎兵衛が羽織はかま姿で町内を回り、羅漢講式の案内をしていました。
羅漢講式は、法要を終えた僧侶たちをもてなす宴席で、その時の献立が残っています。内容を見ると、豪勢な内容で、フナのからしみそ、塩辛に花がつお、タイの刺し身、カモのわん物、塩タラの汁にはコショウが使われていました。
また、一尺のタイの塩焼きやアワビの貝焼きには干し山椒(ざんしょう)が使われ、フナの吸い物にも干し山椒が使われていました。これが、有馬の山椒が文献に登場する最初の記録です。
この山椒は、現在「有馬山椒」と呼ばれています。昨年から、有馬山椒のブランド化を進めるため、地理的表示(GI)保護制度への登録を目指しています。
GIとは、その地域ならではの自然的、人文的、社会的要因の中で育まれてきた品質や社会的評価を持つ産品の名称を、地域の知的財産として保護する制度です。分かりやすく言うと、「スパークリングワイン」と「シャンパン」の違いです。シャンパンは、フランスのシャンパーニュ地方で作られたスパークリングワインのみを指します。
話を入初式に戻します。1685年に出版された「有馬山温泉小鑑」を見ると、輿(こし)に行基菩薩と仁西上人を乗せ、「正月二日湯入ぞめ」と記された絵があります。そばには僧侶の姿も描かれています。その後、時代とともに湯女(ゆな)が加わり、有馬温泉を発見したとされる大己貴命(おおなむちのみこと)と少彦名命(すくなひこなのみこと)もお祭りするようになりました。
2005年度には、「神戸市地域無形民俗文化財」に認定されています。新型コロナウイルス禍以前は、有馬温泉内の事業者や地域住民、宮司、住職、白丁と呼ばれる白装束に烏帽子(えぼし)をかぶった人々、さらに湯女に扮(ふん)した芸妓(げいこ)さんなど、総勢100人以上による練り行列が行われ、有馬小学校の講堂で入初式を開催していました。
現在は、諸事情により規模を縮小して実施しています。入初式の本質は有馬の恩人に初湯を供え、感謝をささげることだと考えています。そのためには、時代に合った変化も必要かもしれません。
日本の「温泉文化」の国連教育科学文化機関(ユネスコ)無形文化遺産登録を目指す動きがありますが、有馬温泉の伝統行事をどのように維持、継続していくかが課題です。(有馬温泉観光協会)























