20年以上にわたって暫定利用が続くコインパーキング(写真中央)。神戸・元町の一等地にある=神戸市中央区下山手通5から
20年以上にわたって暫定利用が続くコインパーキング(写真中央)。神戸・元町の一等地にある=神戸市中央区下山手通5から

 神戸・元町の官公庁街に、使途が定まらず、コインパーキングとしての暫定利用が20年以上続いている県有地がある。兵庫県警本部と県公館に挟まれた約2200平方メートルで、評価額は約16億8千万円。正真正銘の一等地を、ぜいたくにも平面駐車場として使い続ける背景とは-。

 「警察本部庁舎及びひょうご園芸文化館」

 神戸市中央区の県警本部庁舎1階に展示されているミニチュア模型のタイトルだ。県警会計課によると、1996年の庁舎完成時に制作されたとされ、当時の構想に基づく周辺の街並みを表しているという。

 この模型で庁舎東側に建つ施設が「ひょうご園芸文化館」だが、実際は整備されず、現在はコインパーキングとなっている。県の公有財産台帳に記載された2020年9月時点の評価額は、1平方メートル当たり77万3500円。交通の便がよい都心の広い土地を平面駐車場に充てているため、「なぜ有効活用しないのか」と首をかしげる市民もいる。

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 「現在は駐車場だが、あくまで暫定的な措置で、土地の売却予定もない」。問題の一等地について、県管財課の担当者が強調する。

 敷地にはかつて、戦前からの県警の旧庁舎があったが、1978年の県の構想で解体が決定。跡地に文化施設が新築されることになり、93年に都市計画決定された。これが、ひょうご園芸文化館というわけだ。

 だが、95年に阪神・淡路大震災が起きる。隣接地で工事が始まっていた県警本部の現庁舎はそのまま建設された一方で、未着工だったひょうご園芸文化館計画は財政難で凍結された。

 県は2001年、来庁者らのコインパーキングとしてこの土地を使い始める。立体設備を整えるようなことはせず、簡素なつくりで維持しているのは、計画が凍結された土地の暫定利用であるからという。

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 転機が訪れたのは、20年3月。県が「県庁舎等再整備基本計画」骨子案の一部を公表し、この土地を新しい議会棟の建設用地に充てる方針を明らかにした。

 だが、暫定利用が解ける兆しは、1年半ほどであっさりしぼんだ。県知事の交代によって周辺の再整備計画に見直しが入ったためだ。新議会棟構想も「凍結された状態」(県元町再開発課)となり、使途は再び白紙に戻った。

 1993年の都市計画決定によるひょうご園芸文化館と、2020年の再整備基本計画での新議会棟という二つの構想が共に凍結となり、駐車場としての暫定利用が続いている-。

 一等地がたどってきた経緯について、地元の不動産鑑定士は「土地活用の具体的なメリットを慎重に見極めなければならない県の立場は理解できる」と指摘。一方で「県民の『もったいない』という感覚も分かり、暫定利用にしても、別の用途を検討する必要性があるのではないか」と話す。(小川 晶)