渡り櫓(やぐら)の床板にも、隙間が広がっている部分がある=姫路市本町
渡り櫓(やぐら)の床板にも、隙間が広がっている部分がある=姫路市本町

 「よく見てください。ちょっと傾いているでしょう」。世界文化遺産・国宝姫路城(姫路市本町)の大天守4階。多くの観光客が歩く床に顔を近づけ、目を凝らしてみる。確かに中央から北に向かって、少し下がっているようだ。

 姫路市文化財課で文化財建造物保存修理を担う5代目の技術者、福田剛史(41)がつぶやく。「平成の大修理後に進んだ印象。これまで床の傾斜は測っていなかったけれど、データを取った方がいいかもしれない」

 姫路城は世界最大級の木造の城だ。文化庁が国連教育科学文化機関(ユネスコ)に出した世界文化遺産登録の推薦書には「美的完成度が我(わ)が国の木造建築の最高の位置にある」とある。ただ、その保全と公開活用のバランスが悩ましい。