巽通敏さんが15時間、生き埋めになっていた自宅。家財が散乱し、柱がゆがんでいるのが分かる=石川県珠洲市蛸島町(本人提供)
巽通敏さんが15時間、生き埋めになっていた自宅。家財が散乱し、柱がゆがんでいるのが分かる=石川県珠洲市蛸島町(本人提供)

 「何がどうなっとるの」

 続けて苦しそうな声。

 「んんっ。んん…」

 スマートフォンで撮影された動画は38秒。狭い空間で、折れた柱やむき出しのくぎが目の前に迫る。

 元日。石川県珠洲市蛸島町で、巽通敏さん(52)は生き埋めになった。日頃は市の嘱託職員としてケーブルテレビの番組制作を担っている。本人に記憶はないが、もうろうとしながら無意識にスマホを操作したようだった。

 築51年の木造2階建てに兄と暮らしていた。午後4時10分、能登半島地震。1階の廊下に倒れ込んだところへ、天井が崩れ落ちてきた。