「西海岸」と呼ばれ、観光客でにぎわう淡路島北西部に、その建物はある。
29年前の阪神・淡路大震災で大きな被害を受けた北淡町(現淡路市)で、対応拠点になった旧町役場。5町の合併で淡路市が発足した後、地域事務所として使われ、2018年9月に閉鎖された。外壁は黒ずみ、入り口の前には立ち入り禁止のロープが張られている。
私たちは8月下旬、当時町の消防主任だった宮本肇さん(69)に中を案内してもらった。1階に町長室がある。人口約1万1千人の小さな町を襲った大地震。当時の故小久保正雄町長は災害名に「淡路」を入れるよう、政府に訴えた。室内には、小久保町長が使っていた棚だけがぽつんと残っていた。