築130年の自宅を離れることを決めた川岸勉さんと陽子さん=8月、輪島市別所谷町(撮影・長嶺麻子)
築130年の自宅を離れることを決めた川岸勉さんと陽子さん=8月、輪島市別所谷町(撮影・長嶺麻子)

 土砂が、巨石が、車道を埋めている。仮復旧で車1台がかろうじて通れるようになった細い道の先に、その集落はあった。

 石川県輪島市別所谷(べっしょだに)町。40世帯約80人が暮らしていた山里は、しんと静まり返っていた。

 「ここにはもう住めません」。自宅の片付けをしていた川岸勉さん(72)、陽子さん(71)は言う。

 10部屋以上あるという築130年の日本家屋。元日の地震で倒壊こそ免れたものの、電気も水も電話も途絶えた。車庫に近所の30人ほどが集まり、毛布にくるまって寒さをしのいだ。

 道路は土砂にふさがれ、孤立した集落に高齢者とその家族が残される。90代の両親がいる川岸さん夫妻も動けなかった。自衛隊のヘリコプターで全員が脱出できたのは地震の5日後。そのまま入院した人もいた。