しょう君が触れた髪をずっと切れなかったと語る高井千珠さん=西宮市内(撮影・風斗雅博)
しょう君が触れた髪をずっと切れなかったと語る高井千珠さん=西宮市内(撮影・風斗雅博)

30年経ても残る心の傷

 トラウマ。

 命の危険を感じたり、悲惨な光景を目の当たりにしたりしたことでもたらされる心の傷を指す。「心的外傷」、または「心のけが」とも訳される。

 日本では1995年、6434人が亡くなった阪神・淡路大震災で注目され、「心のケア」という概念が広まった。

 この連載の始めに、西宮市の高井千珠(ちづ)さん(63)のことを書きたい。高井さんは震災でわずか1歳半だった双子の長男「しょう君」を亡くした。

 あの朝、西宮の実家に帰省していた高井さんと双子の「しょう君」「ゆうちゃん」は、倒壊した家屋の下敷きになった。