阪神・淡路大震災の発生から30年を経て、少子高齢化や人口減などで厳しさを増す社会に震災の経験や教訓をどう生かすかを考えようと神戸新聞社が設置した「1・17未来会議」の初会合が、神戸市中央区の本社で開かれた。次世代の市民活動の担い手や若手研究者らが、災害時に限らず誰もが「弱い」存在であることを前提に意見を交わした。(長沼隆之)
神戸新聞社は2015年、震災の教訓を次世代と国内外に発信するため、「6つの提言」を公表した。それから10年がたち、格差や孤立・孤独の顕在化、ジェンダー平等の希求、家族のかたちの多様化など社会情勢の変化を踏まえて教訓を問い直す必要があるとして同会議を立ち上げた。
6月25日の初会合には、認定NPO法人コミュニティ・サポートセンター神戸事務局長の飛田敦子さん、神戸学院大特任講師(ジェンダー論)の山口真紀さん、被災地NGO恊働センター代表の頼政良太さんが参加。会議の進行は勝沼直子・神戸新聞論説委員長が務めた。
まず「震災30年をどう受け止めたのか」について意見交換。山口さんは「避難所で性暴力があったことが検証されるなど、ジェンダー的な視点で震災を捉え直そうとする動きは評価できる」と振り返った。
その後、「市民主体」「創造的復興」「被災地責任」「30年限界説」など震災復興を巡る用語について、それぞれの考えを述べた。
飛田さんは、震災を経験した当事者が年々減り、社会のつながりも弱まっている現状を踏まえ、被災していなくても思いを共有する「共事者」を増やすことが30年限界説の克服や課題解決に役立つとした。
山口さんは「再開発で街を去った人がいたように、『創造的復興』の裏で壊されたもの、失われたものを問い続けることが大事」と訴えた。頼政さんは「『被災地責任』は当事者性を持たない若い世代などにはしんどく感じる人もいる。自らの考えも加えて話せるように教訓や語りの『余白』が欲しい」と語るなど、議論は多岐にわたった。
今後は別メンバーも加えて数回の会合を開いて議論を深め、新たな市民社会に向けたメッセージの発信を目指す。