関西の鉄道の駅で一度は目にしたことがあるだろう、「心に傘を。」と書かれた啓発ポスター。自死防止のメッセージを込めた作品を手がけてきたのは、三田市在住の広告クリエーター尾関栄二さん(62)だ。「知られざる活動に光を。」をモットーに、NPO法人やボランティア団体の広報活動をサポートし、約15年。その「原点」を聞くと、ある友人のことを話し始めた-。(尾仲由莉)
広告制作会社や大手映画会社に勤め、テレビCMやポスターなどさまざまな媒体の広告を作ってきた尾関さん。映画会社に勤務していた42歳の頃、同世代の友人男性から相談の電話がかかってくるようになった。
夜中にもメールが届くようになり、尾関さんは彼の話に耳を傾けたが「『寝てないんちゃうか、病院に行った方がええんちゃうんか』と、責めるような口調になってしまっていた。良い接し方を知らなかった」。
1人暮らしの友人はその後、自ら命を絶ち、発見は数日後だった。尾関さんはしばらくして相談窓口や支援団体の存在を知った。「もっと早く知っていたら、僕にもできることがあったかもしれない」と悔いた。