来年で築100年を迎える前田家住宅。現在、家族3人で暮らす前田奈穂さんは「末永くいい状態で維持していきたい」と話す=三田市屋敷町
来年で築100年を迎える前田家住宅。現在、家族3人で暮らす前田奈穂さんは「末永くいい状態で維持していきたい」と話す=三田市屋敷町

 今からおよそ100年前、阪神間で一人の建築家が注目を浴びていた。西村伊作(1884~1963年)。自由主義教育を掲げ、東京に「文化学院」を創立した人物として名高い。阪神間で手がけた住宅は現存していないが、建築事務所の図面が新たに判明。建築史家の川島智生・神戸情報大学院大客員教授(67)は「阪神間モダニズムの先駆者として見直されるべき」と話す。(田中真治)

■100年前の事務所図面発見

 西村は和歌山県新宮市の出身。クリスチャンの父母を幼くして失い、山林地主だった母方の家を継いだ。父方の叔父は、大逆事件で死刑となった大石誠之助。米国で学んだ彼から影響を受け、洋書を取り寄せ自学自習した。

 建築もその一つで、05年設計の自宅は、日本で最初期のバンガローとされる。洋風居間を中心としたコテージなどの簡素な住宅を、著書「楽しき住家(じゅうか)」や新聞紙上で提案。大きな反響を呼び、21年に神戸・御影に建築事務所を開設し、24年に住吉へ移転した。