養殖いかだから引き揚げられたカキ=赤穂市坂越湾沖
養殖いかだから引き揚げられたカキ=赤穂市坂越湾沖

 全国屈指のカキの産地、播磨灘で養殖ガキがかつてない不漁に見舞われている。例年なら水揚げが本格化する時期だが、出荷目前だったカキが大量に死んでしまっているほか、生きたカキの成長も遅れている。海水温の上昇や海の栄養不足を指摘する声もあるが、原因ははっきりしない。一般販売の時期も見通せず、業者らは頭を抱えている。(橘高 声、佐藤健介、西竹唯太朗)

 「どないしようもない。8割ぐらいは死んでしもたわ」。カキ養殖業「舛本水産」(相生市)の舛本成治社長(64)は嘆く。

 同社はいかだ10台で例年60トンほどを生産しているが、今季は大半が殻の口を開けてへい死。生き残った個体も身が小ぶりで茶色がかり、特長である純白のぷりぷり感はない。舛本社長は「カキの食道が細ってしまい、栄養失調の状態」と指摘。今季は水揚げの開始を遅らせているという。

 相生漁業協同組合によると、相生湾全体で7割以上のカキが死んでいる状態といい、川端浩司組合長(74)は「生き残ったカキが大きくなるのを祈るばかりだ」と気をもむ。

 たつの市沿岸部も同様で、同市御津町室津で「公栄水産」を営む磯部公一代表(60)は「こんな状況は初めて」と肩を落とす。「水揚げしてみないと分からないが平年の3、4割を収穫できれば良いほうだろう」

 室津漁協によると、例年11月に入ると水揚げが本格化し、漁港周辺では養殖業者による直売所が人気を集める。ただ、今シーズンは販売開始のめどが立っておらず、同漁協の中川照央組合長(76)は「どこも契約先に卸すだけで手いっぱい。一般販売の時期はかなりずれ込む」と話す。

 赤穂市坂越の「かましま水産」でも、出荷目前だったカキがほぼ全滅した。9月以降に4トン近くが死んだという。鎌島宏文代表(65)によると、9月ごろに「苦潮」と呼ばれる酸素の少ない流れが発生。その後から約10センチまで大きく成長していたカキが次々に死んだという。残ったカキは冷え込みが厳しくなれば成長が進む見込みといい「12月下旬には販売できるようになれば」と期待した。

 都道府県別カキの生産量トップの広島県でも、沿岸部の中・東部を中心にカキのへい死が多発している。同県水産海洋技術センターによると、高水温と高塩分の環境に長くさらされたことが、大量死の原因と推測されるという。担当者は「引き続き詳しい原因分析を進める」としている。

 兵庫県水産漁港課は「まずは被害実態の把握に努める。その上で養殖業者に対する支援も検討していきたい」とした。