27日に公示された衆院選は、解散翌日から投開票日までわずか16日間。戦後最短の限られた日数で、候補者は何を訴えるのか。兵庫県内に候補を擁立した政党の7人の演説を分析すると、最も割合が大きかったのは「物価高、消費税減税など景気対策」。「防衛・外交」「高市政権への評価」が続いた。
県内12選挙区で主な政党から1人ずつ計7人を選び、第一声や出陣式で訴えた内容を調べた。
分類は「高市政権への評価」「与党の連立組み替え、新党など政界再編」-など12項目。演説で割いた時間を基に全体を100%として整理した。
最も割合が大きかった「景気対策」は6人が言及した。
立憲民主党と公明党が結成した「中道改革連合」から兵庫1区で立った前職、井坂信彦氏(51)は、第一声の8割を経済政策に割いた。「大企業向けに2兆円もの減税をしていながら効果が全く見られない」と政権を批判し、「税金を国民に還元し、物価以上に給与が上がる、当たり前の経済成長を取り戻す」と力を込めた。
裏金問題に絡み、昨年4月に党員資格停止処分が解除された9区の自民党前職、西村康稔氏(63)は財政改革検討本部長など党の要職に就いていることをアピールしながら、人工知能(AI)や自動運転などの分野に投資する重要性を強調。「高市総理のもと、責任ある積極財政でしっかりと成長し、皆さんの手取りが増えるよう取り組んでいく」と訴えた。
3区の国民民主党前職、向山好一氏(68)は収入増を訴えの中心にした。ガソリン税暫定税率廃止や「年収の壁」の178万円引き上げの実績アピールに時間を使い、「取り過ぎている税金は国民に返すべきだ」と、党公約の消費税の一律5%引き下げを前面に打ち出した。
一方、7区の日本維新の会前職、三木圭恵氏(59)は、自民との与党連立による「政界再編」の意義を強調。「国家に対する基本的な考え方が違う政党が寄り集まって日本の政治が前に進むのか」と、新党の中道をけん制した。
10区の参政党新人、藤原誠也氏(37)は物価高のほかに外交政策の主張を展開。「毅然(きぜん)とした対応が必要なのに、国益を守ることを優先した外交ができていない」とした。
8区のれいわ新選組新人、長谷川羽衣子氏(44)は、選挙で飛び交うデマや誹謗(ひぼう)中傷を問題視した。「SNSとどのように付き合っていくのか。国会でしっかり話し合い、民主主義を守っていく」と力説した。
11区の共産党新人、苦瓜一成氏(72)は前回の衆院選から1年3カ月しかたっていないことを非難。「大義ない党利党略、私利私欲による解散。主権者として厳しい審判を下そう」と声をあげた。
「憲法」と「防災」に言及した候補者は7人の中にいなかった。
■減税の副作用にも注目 立教大の柏木理佳特任教授(生活経済政策)の話
自民党や中道改革連合などがこぞって主張する飲食料品の消費税減税は、4人家族の家計で考えると節約効果は月数千円と推計され、物価高に苦しむ国民にとってありがたいのは確かだ。ただ小売業や飲食店にとってはシステム変更で新たな負担が生じる可能性が高い。財政規律の緩みに国債市場が反応し、その影響で個人の住宅ローン負担が増える恐れもある。一見口当たりのいい政策のマイナス面をどう抑制するかという議論は欠かせない。有権者は、政策の恩恵だけでなく副作用についても正面から説明している候補者にこそ1票を投じてほしい。
■簡潔な旗印、投票左右 明治大の加藤言人専任講師(投票行動論)の話
新党の中道改革連合を有権者の多くが「立憲民主党とほぼ変わらない」と認識しているとみられ、イメージ刷新による支持層拡大につながるかどうかは未知数だ。創価学会を支持母体とする公明党に拒否感を持つ立民支持者がいることも想定され、公明の協力がプラスとは断定できない。自民党は、高市早苗首相の人気が党支持率に必ずしも結びついておらず、不安材料だ。昨夏の参院選で国民民主党が掲げた「手取りを増やす」、参政党の「日本人ファースト」のように「何を目指す政党か」という旗印を簡潔に示せるか否かも投票行動に影響を与えそうだ。
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