地元兵庫に二つの金メダルを持ち帰った車いすテニスの上地結衣=三木市、ブルボンビーンズドーム
地元兵庫に二つの金メダルを持ち帰った車いすテニスの上地結衣=三木市、ブルボンビーンズドーム

 昨年のパリ・パラリンピック車いすテニス女子で日本勢初のシングルスとダブルスの2冠を果たした上地結衣(31)=三井住友銀行、明石商高出身。今年1月の全豪オープンのシングルスも5年ぶりに制し、世界ランキング1位に君臨する。4月下旬には三木市のブルボンビーンズドームで地元のファンらにプレーを披露し、「多くの人に支えられ、応援されて幸せ。今後の成長も見てほしい」と実感を込めた。(井川朋宏)

■自信

 パリ・パラは2歳下の田中愛美と組んだダブルスの決勝で、3時間に及ぶ熱戦の末に8大会連続優勝のオランダ勢を破った。「オランダに『ちょっと違うぞ』と重圧をかけられた。その流れが後につながった」と言う。

 翌日のシングルス決勝。前回東京パラの決勝で敗れた宿敵ディーデ・デフロート(オランダ)に立ち向かい、「たくさんの方のパワーをもらい、一人で戦っている時間はなかった」と振り返る。

 第1セットを落としたが、2セットを奪い返して逆転勝ち。「日本チーム全体で得た結果。今までで一番いい試合ができたと胸を張って言える。間違いなく自信を得られた」

 一方、優勝インタビューを前に習慣で頭の中を整理するうち、「このタイミングでこのショットが打てれば」と課題が自然と湧き上がる自分に驚いた。「まだやることがいっぱいある」と気付かされた。

 周囲からはLINE(ライン)などで千件以上の祝福メッセージが鳴りやまず、「早く返したい」とほぼ寝ずに返信し続けたという。

■奪還

 パラ4大会連続出場で、シングルスは8強、銅、銀、金と着実に階段を上ってきた。今季の目標は四大大会で唯一手にしていないウィンブルドン選手権制覇と年間世界ランキング1位の奪還だ。「勝つことにフォーカスしながら自分自身がどう変化し、どれだけ挑戦できるか楽しみ」とまだ見ぬ領域を追い続ける。

 ほぼ毎年出続ける地元のダンロップ神戸オープン初戦の日、31歳になった。「自分のテニス人生の最後まで、もっともっとたくさんの人を巻き込み、一緒に戦う気持ちになってもらいたい」と瞳を輝かせた。