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主演映画「太秦ライムライト」の上映会で地元の関係者から花束を受ける福本清三さん(左)=2014年11月、香美町香住区香住(同町提供)
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主演映画「太秦ライムライト」の上映会で地元の関係者から花束を受ける福本清三さん(左)=2014年11月、香美町香住区香住(同町提供)
香住観光案内所に設けられた福本清三さんの追悼コーナー=香美町香住区七日市
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香住観光案内所に設けられた福本清三さんの追悼コーナー=香美町香住区七日市
主演映画「太秦ライムライト」が京都で公開された初日、香美町から駆け付けた住民らと写真に収まる福本清三さん(前列中央)=京都市右京区太秦東蜂岡町、東映太秦映画村(香美町提供)
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主演映画「太秦ライムライト」が京都で公開された初日、香美町から駆け付けた住民らと写真に収まる福本清三さん(前列中央)=京都市右京区太秦東蜂岡町、東映太秦映画村(香美町提供)
江戸末期から続く宮下畳店の5代目。「清ちゃんから遊びで教わったことが畳作りにも生きている。」と話す宮下武男さん=香美町香住区
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江戸末期から続く宮下畳店の5代目。「清ちゃんから遊びで教わったことが畳作りにも生きている。」と話す宮下武男さん=香美町香住区
中学時代の福本清三さん(右)と宮下武男さん
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中学時代の福本清三さん(右)と宮下武男さん

 時代劇の斬られ役として「5万回斬られた男」の異名を取った兵庫県美方郡香美町出身の俳優福本清三(せいぞう)(本名・橋本清三)さんが今年1月1日、肺がんのため京都市内の自宅で77歳で死去した。JR香住駅前の同町香住観光案内所では2月中旬から、ポスターや写真などを展示した追悼コーナーを設置。訪れた人たちが、郷里のスターの在りし日をしのんでいる。(金海隆至)

 江戸時代の絵師円山応挙と門弟らが障壁画を制作した名刹(めいさつ)大乗寺の門前町で、6人きょうだいの5番目、三男として生まれた。

 家が隣で1歳下だった宮下武男さん(77)は、近所の子どもたちと一緒に香住小学校、香住第一中学校へ登校した。福本さんは白い鼻緒のげたで通学したという。「清(せい)ちゃんとは毎日のように裏山や川で遊んだ。チャンバラごっこで木刀を構えた姿は格好良かった。まさか時代劇の俳優になるとは」

 雪が解けて春になれば矢田川で魚を取り、夏休みには河原でたき火をしてアユを焼いて食べた。秋には山で木の実を採り、ヤマイモを掘った。冬には山道にわなを仕掛けて野ウサギを捕まえた。「無口ではにかみ屋だったが、手先が器用でいろいろ教わった。魚を取るはえ縄を作ったり、竹で弓矢やスキーを作ったり。清ちゃんが船の櫓(ろ)をこいで川の上流へ向かったこともあった」と懐かしむ。

 近所の上級生だった発酵食品会社「トキワ」(同町)会長の柴崎一秀さん(79)は「気取らず謙虚なのに存在感があった。古里で培われた強烈な個性であり、武器だったのでは」と話す。

    ◇

 福本さんは中学卒業後、15歳で故郷を離れた。宮下さんは「京都で親戚が経営する米屋で働くと言っていた」と振り返る。高度成長期を迎える前、高校に進む同級生は少なかった。回想録「おちおち死んでられまへん-斬られ役ハリウッドへ行く」によると、香住駅から単身、汽車で京都へ向かったという。

 東映京都撮影所に入所したのは「親戚のおじさんがたまたま、所長を知っていた」(同回想録)から。大部屋俳優となり、映画やテレビの時代劇に出演した。主役を引き立てるため、印象に残る「斬られ方」を研究し、けがも恐れずえび反りになって後方に倒れる斬られっぷりで知られた。

 米映画「ラスト・サムライ」(2003年)では、人気俳優トム・クルーズさんが演じる主人公を警護する寡黙な侍役に抜てきされ、脚光を浴びた。

 海外撮影中に定年の60歳を迎えた。帰国した福本さんは講演会で「役者になるために子どもの頃からしておくことは?」と問われ、こう答えている。

 「勉強にも、遊びにも、なんでも一生懸命やるっていうこと、それがまず一番でしょう。なんでも与えられたことを夢中になってやる。私が東映に入って、この世界で45年たちますけど、子ども時代にそれこそ一生懸命遊んだことがどれだけプラスになったか。山のなかを走りまわっていましたから、忍者の役なんかの時には頭(かしら)よりも早く山を駆け降りてよく怒られましたけど」(同回想録)

     ◇

 14年、自身の半生を描いた初の主演映画「太秦ライムライト」の上映会を、同級生らが中心となって香住区中央公民館(同町香住区香住)で開いた。2回の上映に千人以上が来場した。

 舞台から福本さんは「斬られるだけしか能のない脇役なのに、こんなことになってしまって。多くの皆さんのおかげ、そのことに尽きます」とあいさつ。上映後のサイン会では多くの列ができた。宮下さんが「清ちゃん、偉い人になったなあ」と声を掛けると、照れくさそうに笑ったという。

 日の当たる機会の少ない大部屋俳優でありながら、「どこかで誰かが見ていてくれる」という信条を貫いた。いぶし銀の演技はファンの心に生き続ける。

     ◇     ◇

 香美町香住観光協会が香住観光案内所(同町香住区七日市)の1階ロビーに、福本清三さんの追悼コーナーを設置している。主演を務めた映画「太秦ライムライト」のポスターやパンフレット、郷里で開かれた上映会で町民と交流する様子を撮影した写真や直筆サインなど約20点を展示。当面は7月末までの予定だが、反響によっては延長も検討する。無休。

 置かれたノートには、町内外から訪れたファンや殺陣の指導を受けた女性らが「一つのことに打ち込む人生の素晴らしさを教えてくれた」「先生と刀を合わせられた時間が永遠の宝物」など、感謝の言葉や思い出をつづっている。

 同協会の前会長で上映会開催に尽力した藤原進之助さん(75)=同町=は「端役でも研究を重ね、一生懸命取り組んだ。人にほめられても『アホなこといいなさんな』が口癖で、控え目に喜ぶ人だった」と生前をしのんだ。

 午前8時半~午後5時半。同協会TEL0796・36・1234

(金海隆至)

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