但馬

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タニウツギの花をスマートフォンで撮影する井上鈴奈さん=たじま高原植物園
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タニウツギの花をスマートフォンで撮影する井上鈴奈さん=たじま高原植物園
「むらおか振興公社」社長の田丸明人さん(左)と井上鈴奈さん=たじま高原植物園
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「むらおか振興公社」社長の田丸明人さん(左)と井上鈴奈さん=たじま高原植物園
香美町のフォトコンテストで最優秀賞に輝いた作品「秋の色」。木の殿堂でも飾られている(同町提供)
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香美町のフォトコンテストで最優秀賞に輝いた作品「秋の色」。木の殿堂でも飾られている(同町提供)

 1枚の写真が運命を変えた-。Uターンで戻った兵庫県香美町で家族の介護などに追われ、新型コロナウイルス禍の影響もあって新たな仕事に就けずにいた女性が、地元の紅葉を撮影した写真の投稿をきっかけにチャンスをつかんだ。同町のフォトコンテストで最優秀賞に輝き、たじま高原植物園(同町村岡区和池)に職員として採用された。見頃を迎えた花や山野草の情報発信を任され、新緑が映える園の魅力アップに一役買っている。(金海隆至)

 同町の井上鈴奈(りな)さん(26)。養父市の第一学院高校養父本校を卒業し、大阪の専門学校を経て2016年4月、豊中市で障害のある小中高生を休日などに預かる「放課後等デイサービス」の通所施設で指導員として働き始めた。その後、スキルアップを図ろうと、社会福祉士の資格を目指していったん退職。通信制の大学に編入学し、勉強に専念する日々を送っていたが、地元で暮らす祖母の介護の人手が必要となり、19年秋に帰郷した。

 昨年春に資格を取得。再び働こうと、仕事を探し始めるが、コロナ禍で思うように見つからない日々が続いた。加えて同7月には近隣で起きた火災が実家に延焼。玄関や外壁を焼いた上、部屋にいた祖母がフラッシュバックにさいなまれるようになり、心身の調子がさらに悪化した。

 11月、地元の紅葉を楽しもうと、たまたま訪れた県立「木の殿堂」(同町村岡区和池)の周辺で一眼レフカメラのシャッターを切った。父から譲り受けたカメラで腕に特段の自信はなかったが、ちょうど目にした風景が「空の模様と紅葉、広場の色がぱちっとはまり、一枚の絵のようだった」と井上さん。慌ただしく夏が過ぎていき、秋の訪れとともにようやく癒やしを実感した瞬間だったともいう。

 同町のフォトコンテストに応募すると、約1200点の中から見事、最優秀賞に輝いた。そして、その1枚に強く引かれたのが、第三セクターで、たじま高原植物園を運営する「むらおか振興公社」社長の田丸明人さん(65)だった。

 前年度のコンテストで自身も入賞していた田丸さん。見慣れた木の殿堂周辺での写真だったが、「人と違う観点と感性を持っていると感じた」と振り返る。

 今年3月、井上さんの実家に副賞の特産品を届けることになり、初めて対面。コロナ禍で大阪に戻れない現状を知った。帰る道すがら、植物園の情報発信を担う仕事の適任者だと考え、メールで打診すると、しばらくして「話を聞かせてください」と返信があった。

 標高約660メートルに位置する植物園は、県天然記念物で樹齢千年を超える大カツラをシンボルに、樹木や草花など2千種類以上が群生し、四季を通じて自然の神秘を楽しめる。田丸さんは、毎日違った表情を見せる高原の空や植生に関心を抱き、写真や動画を更新してくれる人を探していた。

 井上さんは4月中旬から勤務し、毎朝、園内を散策して草花をチェックする。白く透けて幽霊のように見えるギンリョウソウや、田植えの時期に花を咲かせるタニウツギなどを撮影し、会員制交流サイト(SNS)に投稿。その日の天候や名称の由来を紹介する短文を添え、好評を呼ぶ。

 「言葉遣いが柔らかく、すっと入り込める内容。期待に十分応えてくれている」と田丸さんも喜ぶ。

 幼いころから絵画が得意で、県のコンクールで入賞したこともある井上さん。「今は仕事を覚え、生きるのに精いっぱいだが、好きな写真を通して植物園の魅力を伝えていけたらうれしい」と話している。

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