但馬

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温泉が配湯されている湯村温泉の民家には、水と温泉の2種類の蛇口がある=新温泉町湯
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温泉が配湯されている湯村温泉の民家には、水と温泉の2種類の蛇口がある=新温泉町湯
湯村温泉の泉源「荒湯」近くで温泉卵づくりを体験する観光客=新温泉町湯、湯村温泉
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湯村温泉の泉源「荒湯」近くで温泉卵づくりを体験する観光客=新温泉町湯、湯村温泉
蒸気を噴き上げる荒湯=新温泉町湯
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蒸気を噴き上げる荒湯=新温泉町湯
湿地帯のぬかるんだ土地に家屋を建てるために盛り土が施された七釜温泉の民宿街。段差が散見される=新温泉町七釜
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湿地帯のぬかるんだ土地に家屋を建てるために盛り土が施された七釜温泉の民宿街。段差が散見される=新温泉町七釜
浜坂温泉が初めて見つかった場所。「辺りは水田が広がり、泥の層が温泉の湧出を妨げていた」と説明する谷本勇さん=新温泉町浜坂
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浜坂温泉が初めて見つかった場所。「辺りは水田が広がり、泥の層が温泉の湧出を妨げていた」と説明する谷本勇さん=新温泉町浜坂

 家庭の浴室の蛇口から温泉が出る「湯のまち」兵庫県新温泉町。合併前の旧浜坂町時代に偶然温泉を掘り当て、配湯システムを整備して各家庭に供給する仕組みをつくり上げた話は、すでに紹介した。今回のテーマは「なぜ温泉が湧くのか」。地中のことは分からないが、幸い、新温泉町には山陰海岸ジオパーク館(同町芦屋)という地質学の知識が詰まった施設がある。町名になるほど地域で存在感のある「温泉」の成り立ちや歴史、各温泉の特色などを同館の谷本勇館長(78)に聞いた。(末吉佳希)

 「温泉の専門家ではないので、あくまで私見を含めてお話しします」

 前置きした上で、谷本さんが「まずは温泉のメカニズムから」と話し始めた。

 温泉には、地球を覆うプレートにできた「断層」にしみこんだ雨水などが、火山の地下にたまったマグマに温められた「火山性温泉」と、地下深くでマグマの温度が下がった高温岩帯で温められた「非火山性温泉」に分けられる。新温泉町内では断層が見つかっているため、火山性温泉の可能性が高い。

■湯村温泉

 約1200年前に発見されたとされる湯村温泉。谷あいに旅館や民家が並び、泉源は60カ所を超える。湧出量は全体で毎分2300リットル。配湯の歴史も古く、民家の庭や玄関先には温泉が出る蛇口があり、冬場の洗い物や消雪に利用されてきた。保湿効果がある硫酸塩や、肌に良い炭酸水素塩などを含む泉質で、「美肌の湯」と呼ばれる。

 「湯村温泉の一帯は断層の上にあります」と、谷本さん。同町中央部から北東へ20キロ以上にわたる地下深部には「湯村断層」がある。そこへ雨水がしみこみ、マグマの名残の熱で温められると、体積の膨張などで地上に湧き出す。その過程で鉱物などの成分が温泉に溶け出していく。「湯村温泉は断層の上にできた温泉街。ジオロジー(地質学)の分かりやすい例」。谷本さんが力を込めた。

 最大の特徴は、源泉の温度が100度近いこと。「地下水を温める岩石が高温で、しかも浅いところにあるのだろう」と、谷本さんは推測する。温泉町史には「灼熱人を襲う」とあり、豊富な湯量で蒸気が周辺に行き渡り、冬場でも温かく暮らせたそうだ。

 「地中で起こる現象ですから、大きな地震で温泉の湯が出なくなることもある」と谷本さん。1943(昭和18)年の鳥取県東部を震源とする大地震では一週間ほど湯が止まったとされ、同様の現象は江戸時代にもみられたという。谷本さんは「自然環境が変化するように、急な地震で温泉がストップする可能性もゼロではない。温泉はそうした自然の恩恵なんです」と力説した。

■七釜温泉

 町の中央から北部へと流れる岸田川。七釜温泉はその下流域にあり、民宿が軒を連ねる。断層の有無は分かっていないが、「一帯は川の流れで砂や泥が運ばれてできた土地。湿地が広がり、稲作が盛んだった」と谷本さんは話す。

 同温泉は62(同37)年、井戸の掘削中に偶然見つかった。喜んだ住民たちは当初、近くに仮設の浴槽を置いて湧き出る温泉をため、憩いの場として活用したという。泉質はナトリウムやカルシウムを含んだ硫酸塩泉で、保温効果が高いことから「こたついらずの温泉」として親しまれている。

 昭和中後期まで温泉が見つからなかった理由について、谷本さんは「地下に広がる泥や砂の層が原因ではないか」と推測する。周辺の地下数十メートルに泥の層が広がっており、温泉の湧出を妨げていた可能性が高いという。

 民宿街の外れの水田と住宅の境目に約1メートルの段差がある。「湿地帯で家屋が建てられなかったので、こうした『盛り土』で地盤を固めたんです」。高いところでは2メートルほど土が盛られ、七釜は民宿街として急成長を遂げた。「温泉に活路を見いだした住民たちの熱意の証」と谷本さんは目を細めた。

■浜坂温泉

 岸田川の河口近く。両側に田んぼが広がる町道にマンホールがある。

 「浜坂温泉はここで見つかりました」と谷本さん。

 78(同53)年、消雪用の水源確保のため掘削していると地下数十メートル地点で湧き出した。谷本さんは「理屈は七釜温泉と同じで、泥の層によるものだが、浜坂はさらに深いところまで層が広がる。発見が遅れたのはそのためではないか」と推測する。

 「浜坂の最大の特徴は高い塩分濃度」。海岸沿いにあるため、海水が温泉に混ざり、湧出している可能性が極めて高いという。

 泉質は高濃度の塩分で保温や保湿、筋肉の緊張の緩和、血行促進の効果がある。浜坂温泉郷は日本海を臨む景観も美しく、91年に「国民保養温泉地」として国の指定を受けている。

 三つの温泉を持つ新温泉町。「それぞれ違いがあって、面白いんですなぁ」。谷本さんがしみじみと話した。

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