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幾何学模様が美しい箱
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幾何学模様が美しい箱
友井田千穂さん作のネックレス=豊岡市城崎町湯島
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友井田千穂さん作のネックレス=豊岡市城崎町湯島
神谷勝さん(右)と友井田千穂さん(左)=豊岡市城崎町湯島
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神谷勝さん(右)と友井田千穂さん(左)=豊岡市城崎町湯島
神谷俊彰さん(左)と田口幸子さん(右)=豊岡市城崎町湯島
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神谷俊彰さん(左)と田口幸子さん(右)=豊岡市城崎町湯島
のりを練る福井智子さん=豊岡市城崎町湯島
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のりを練る福井智子さん=豊岡市城崎町湯島

 ミリ単位の細かさで色鮮やかに表現された幾何学模様や、滑らかな曲線の着物姿。兵庫県豊岡市城崎町の「麦わら細工」は、「わら」のイメージからは想像できないほど繊細で華やかな伝統工芸品だ。江戸時代から継承されてきた技巧を今に受け継ぐのは、職人でつくる「麦わら細工技術者の会」の5人のみ。現在、匠の技に引かれた市外の女性3人が職人を目指し弟子入りしている。(石川 翠)

 麦わら細工はストロー状の麦の茎を色染めした後、切り開いて平らにし、箱や色紙などに切り貼りして模様を描く伝統工芸品で、約300年続いている。

 職人を目指す3人は、大阪府出身で20年前にやって来た友井田千穂さん(41)と、同府から間もなく移住予定の福井智子さん(30)。3年前に東京から来た田口幸子さん(37)。

 友井田さんは、同会の会長も務めるベテラン職人の神谷勝さん(80)の下で修業中。福井さんと田口さんは、神谷さんの長男で「城崎麦わら細工振興協議会」の会長を担う俊彰さん(56)に弟子入りしている。勝さんは先代の元二郎さん(故人)から受け継いだ2代目で、俊彰さんが3代目だ。

    ■   ■

 勝さんに弟子入りした友井田さんは、京都の美大に通っていた学生時代に、偶然インターネットで「細工」と検索。麦わら細工に目が留まったという。

 「編んであるのかな」と興味を抱き、夏休みに日帰りで城崎へ。実物を見てその光沢のある発色に驚いた。すでに気持ちは固まっていて、その足で勝さんのもとを訪れ、弟子入りを申し出たという。

 最初、勝さんは「よそから来た人はだめだ」と断った。後継者を探してはいたが、修業中は麦わら細工だけでは生活ができず、外から来た人が城崎の伝統工芸をさらに次へ伝えられるか不安だったという。

 しかし、友井田さんが再訪した際、試しに絵はがきに花の柄を施してもらうと、「初めてにしてはきれいに作るな」と思ったという。3度目の申し出で熱意に押され、住み込みのバイトも紹介した。

 友井田さんは2001年9月、城崎に移住。貼り付けに必要な「のり練り」、麦わらを開いて平らにする「麦わらすり」、きり箱などのサイズに合わせて切りそろえ貼り付ける「地張(じばり)」など基本を教わってきた。

 集中すると「何時間でもできる」という友井田さんだが、生活費を稼ぐため夜は働きながらの修業生活。自宅と工房、バイト先を行き来しながら、実直にひたすら技を磨いてきた。

 5年前からはオリジナルのアクセサリーも作り始めた。勝さんもブローチやペンダントは作っていたが、ピアスやネックレス、指輪などは友井田さんのオリジナル。写真共有アプリ「インスタグラム」を見た女性客が来てくれることが増えたという。

 今後は「フランスで開催されるジャパンエキスポに出展し、海外の人にも見てほしい」と話す。

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 「麦わら自体は直線なのに曲線も描けて、自然の素材から作られているとは思えない繊細さ」

 福井さんは16年に旅行で城崎を訪れた際、もともと工芸が好きだったことから麦わら細工の展示がある「城崎麦わら細工伝承館」に立ち寄り、流れていた作業工程を紹介する動画を見てその技術に驚いた。

 麦わら細工職人に憧れ、大阪で作業療法士として働きながら毎月2回、俊彰さんの工房に通ってきた。「ごはん粒を練ってのりにするだけでも一苦労」。いつか紫式部が和歌を詠む姿を描いた模様物などに挑戦したいという。

 田口さんは、18年に初めて観光で訪れた城崎温泉街の町並みに心ひかれ、東京の実家の商店が店をたたむタイミングも重なって、翌月には旅館で住み込みで働き始めたという。

 最初は「絵だと思った」という麦わら細工を、俊彰さんの工房で体験したことですっかり魅了され、休みのたびに体験に訪れた。俊彰さんはその行動力に驚き、地域おこし協力隊の制度の活用を持ち掛けた。

 田口さんは20年12月から活動を開始。「作品によってのりの硬さを変えたり、天然素材の麦わらの厚さをそろえたり、奥が深くて難しい」と、うなる。

 俊彰さんは「自分の人生をかけてまで麦わら細工に携わりたいと思ってくれたことに驚きと感謝」。勝さんは「先輩たちから受け継いだ技術を引き継いでもらえるよう、裾野を広げながらもグレードを上げていけるよう育成に力を入れていきたい」と話した。

 5人の麦わら細工が見られる作品展が25日まで、城崎文芸館(TEL0796・32・2575)で開かれている。

【城崎の麦わら細工】 江戸時代の中期、因幡(鳥取県)から訪れた半七という湯治客が、竹笛に麦わらを貼り付けたことが始まりとされる。大麦の茎を色染めして切り開き、平らにして模様を貼っていく「模様物」、幾何学模様に貼っていく「小筋物」のほか、ストロー状のものを編み込む「編組物」もある。東京都大田区の大森地区でも作られていたが途絶えたため、古来の技術が今も伝承されているのは城崎のみ。

<メ モ>

 ◆城崎麦わら細工伝承館 豊岡市城崎町湯島376の1。江戸時代から現代までの作品が展示され、麦わら細工の歴史が学べる。入館料は大人300円、中高生200円、午前10時~午後4時(入館は午後3時半まで)。水曜休館。TEL0796・32・0515

 ◆かみや民芸店 豊岡市城崎町湯島391。きり箱や色紙、小物などの販売や、職人の神谷俊彰さんから教わる麦わら細工体験も行う。午前10時~午後6時。TEL0796・20・5206

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