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演劇ワークショップに参加する建設企業の若手社員ら=兵庫県豊岡市日高町日置
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演劇ワークショップに参加する建設企業の若手社員ら=兵庫県豊岡市日高町日置
演劇ワークショップに参加する建設企業の若手社員らに語りかける劇作家の平田オリザさん(中央)=兵庫県豊岡市日高町日置
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演劇ワークショップに参加する建設企業の若手社員らに語りかける劇作家の平田オリザさん(中央)=兵庫県豊岡市日高町日置
演劇ワークショップに参加する建設企業の若手社員ら=兵庫県豊岡市日高町日置
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演劇ワークショップに参加する建設企業の若手社員ら=兵庫県豊岡市日高町日置
演劇ワークショップに参加する建設企業の若手社員ら=兵庫県豊岡市日高町日置
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演劇ワークショップに参加する建設企業の若手社員ら=兵庫県豊岡市日高町日置
「エア大縄跳び」に取り組む建設企業の若手社員ら=兵庫県豊岡市日高町日置
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「エア大縄跳び」に取り組む建設企業の若手社員ら=兵庫県豊岡市日高町日置

 若手社員が定着しにくいとされる建設業界で、早期の離職に歯止めをかけるための取り組みが、兵庫県北部の但馬地域で始まった。現場にはさまざまな業者や職人が出入りし、複雑な人間関係から悩みを抱えて、業界を去る若者が多いという。そこで、業界団体が地元在住の劇作家平田オリザさんに協力を仰ぎ、演劇の手法を用いてコミュニケーション力を向上させるワークショップを同県豊岡市で開いた。普段は疎遠に映る演劇とのコラボレーションが、人手不足に悩む業界に新たな風を吹き込むか。(石川 翠)

 ■新卒の半数が5年以内に離職

 ワークショップは、中堅を中心に98社が加盟する兵庫県建設業協会が企画した。豊岡、南但、浜坂の3支部が、将来的に現場監督を担う人材を招集したところ、22社から10~40代の29人が参加した。

 建設現場には、工程に応じて異なる業者や職人が数多く行き交い、出入りする。さまざまな背景を持つ働き手を取りまとめるには、一定のコミュニケーション能力が必要となる。建設と演劇は関係なさそうに見えるが、垣根を越えた異色のコラボで現場監督の統率力を鍛え上げようというのが、今回のワークショップのミッションだ。

 同協会の2021年度の実態調査報告書によると、県全体で新卒採用者の半数近くが5年以内に離職しているという。現場の週休2日などを通じて作業環境の改善に取り組むが、制度を整えるだけではなく、人間関係での働きやすさも同時に追求するための方策を検討してきた。

 現場監督の気苦労は多い。複数の下請け業者などの職人らを束ねたり、機材や材料の段取りをしたりと、煩雑な工程がスムーズに進行するよう、指示や調整を行うことが業務で、常に他者との適切な意思疎通が迫られる。同協会豊岡支部の山口泰秀副支部長は「建設業界の人たちは職人気質で口下手な人が多い」と打ち明け、過去には作業工程が伝わっていなかったために作業員が重機でひかれるような事故も発生した。「働き手同士だけでなく、現場周辺の地元住民への配慮、発注先との交渉など、コミュニケーション力は必須」と強調する。

 ■ポイントは「イメージの共有」

 この日のワークショップは、2人一組で行う体操から始まった。互いに背中を合わせて座った状態から、床に手をつかずに立ち上がってみたり、背中合わせの状態から片方がかがんで、相手を背中に乗せたりした。体慣らしと信頼関係をつくることが目的だ。

 その後、1~50の番号が書かれたカードが配られ、番号が大きいほど「活発な」趣味を、小さいほど「おとなしい」趣味を持つとの設定で、会話をしながら近い番号の人を探していくゲームに取り組んだ。互いにカードの番号を伏せつつ、番号の大小に即してゴルフや野球、読書、折り紙などの趣味を披露し合ってペアをつくっていった結果、互いの番号が20以上も離れるペアもあった。同じ物事でも、思い描くイメージが意外に懸け離れていることを実感した。

 次に、道具は使わずに2人一組でキャッチボールの動作と、6人で大縄跳びの動作をした。すると、キャッチボールでは投球と捕球の動きがぎこちなくてリアルさに乏しかったが、大縄跳びでは実際に縄をよけたり、タイミングよく跳んだりするように見せることができた。平田さんは「イメージの共有」をポイントに挙げ、共有しやすいものと、しにくい事象があることを伝えた。

 平田さんは、成果が出る前から洗練されたプレゼン準備に取りかかる米国の科学者の事例を挙げながら、「日本では中身が良ければ伝わると思われてきた。しかし、良い中身とは独創的で、それがゆえに、イメージの共有が難しいものだ。良いものほど、どう伝えるかが大事になってくる」と強調した。

 ■多様な文化的背景を理解する

 職場でイメージを共有するためには「部下がどのような文化的背景を持っているか分からないので、いろいろなことを試してみる勇気と、その挑戦を認め合う空気が大事」とした。最後に、電車内で初対面の人に話し掛けるという一場面を台本にそって演技した。国によってマナーなどが違うため、見る人の解釈が異なることを説明し、「違いを面白がれる人になってほしい」と締めくくった。

 同県香美町の建設会社に勤める村上栄里子さん(44)は「職人によってやり方や考え方が異なって、トラブルになることもあるだろうから、気を付けたい」。養父市の建材会社勤務の小柴英毅さん(29)は「先日、個人業者が集まった現場で、細かい指示がなくて戸惑ったことがあった。自分は指導する際にはできるだけ説明をしていこうと思った」と感想を述べた。

 ■「演劇」広がる但馬ならではの試み

 演劇の手法で建設業界の職場環境の向上を目指すという珍しい試みは、但馬ならではの実践といえる。前豊岡市長の中貝宗治さんが、演劇のまちづくりを進めてきたことがきっかけとなり、平田さんが劇団の活動拠点を東京から移転。同市内の全学校では、演劇の手法を用いたコミュニケーション教育が行われている。

 今回のワークショップは、中貝さんが理事長を務める一般社団法人「豊岡アートアークション」が県建設業協会に橋渡しをしたが、「演劇の観賞だけではない、演劇の力をうまく活用しようという動きがいろんな分野に出てきている」とみる。

 同協会豊岡支部の中貝稔事務局長は「若手のモチベーションを高め、働きやすい職場を目指して取り組みを広げていきたい」と話した。

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