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手前の399が跳ね上がって、「前夫」と新たにペアとなった雌を攻める(稲田千帆さん提供)
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手前の399が跳ね上がって、「前夫」と新たにペアとなった雌を攻める(稲田千帆さん提供)
攻防の後、399は巣に立ち、くちばしを鳴らしていた(稲田千帆さん提供)
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攻防の後、399は巣に立ち、くちばしを鳴らしていた(稲田千帆さん提供)

 「399が1週間以上、見つかっていない」「11は今、24といる」-。3月27日にあったコウノトリの全国一斉調査で、参加者の会話に耳が吸い寄せられた。視線の先には、兵庫県豊岡市日高町の人工巣塔で翼を休める雄と雌。参加者が口にした暗号のような数値が気になった。取材を進めると、ペアの「破局」「再婚」という愛憎劇が繰り広げられていた。(丸山桃奈)

 会話についていけず、内容を聞いてみた。399とは、野外コウノトリに割り振られた個体番号の一つで、この巣塔を根城にするペアの17歳雌(J0399)をさす。399が巣塔から姿を消し、その間に相方の3歳下の雄(J0011)は早速、12歳の新しい雌(J0024)と一緒に巣にいた-という意味だ。

 参加者は399の動向を案じていたのだった。それにしても、素人には同じように見えるコウノトリの微妙な違いを識別して番号で呼ぶさまは、マニアならではといえる。

 3月初旬、京都府京丹後市で雌のコウノトリが防獣フェンスに衝突し、死んだ事例があった。399とは別の個体だったが、同じように不慮のトラブルに遭遇した可能性が彼らの頭をよぎった。というのも、コウノトリはいったんペアになれば、互いに一生を添い遂げるといわれるからだ。

 「(夫は)399が死んだと確信したのかな」「もし、奥さん(399)が生きていて戻ってきたら…」。会話をそばで聞いていた「日本コウノトリの会」の佐竹節夫代表は「ペアが生き別れる事例は、聞いたことがないからなあ」と、自らに言い聞かせるようにして不安を打ち消した。

 参加者は、この日の一斉調査で399の発見を目指した。フェンスやネットに引っかかって死んだ恐れもあり、田んぼや人目に触れにくい山裾を探し歩いたが、結局、一斉調査では見つけられなかった。

 ところが、この日の一斉調査で報告されなかったものの、一般の市民が同市日高町上郷のビオトープで、399の姿を確認したとの情報が同会にもたらされた。みんなは喜びつつ、新たな疑問が沸いた。なぜ、このペアは生き別れたのか-。

 一斉調査の後、399の相方だった雄が24と一緒に水田で餌を取り、巣塔にいる姿が確認された。4月1日には、399が「前夫」のペアを攻撃し、双方で激しい攻防を繰り広げる姿もカメラで捉えられた。

 撮影に成功したのは、コウノトリを長年見守ってきた稲田千帆さん(61)=兵庫県養父市。「399は『2対1』の不利な形勢でも諦めず、『自分の巣塔は渡さない』という強い意思を感じた」と語った。

 399はその後、新しいペアに明け渡す形で巣塔を後にした。11の後継妻となった24が、卵を抱く目撃情報も同会に寄せられた。県立コウノトリの郷公園によると、ペアが生き別れた上で、新しいペアが誕生するのは初めてという。

 人間界さながらの「男女関係のもつれ」。それでもヒナのふ化を願い、野生復帰が着実に進むことを望むのは、人間の勝手な都合だろうか。

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