兵庫県香美町の山と海で、早朝と夜に幻想的な光景が見られる。小代区貫田の「うへ山の棚田」では水面を朝焼けが彩り、香住区の海では波打ち際で明滅する「夜光虫」が確認された。但馬の深奥な自然を追って、写真愛好家たちが訪れる。(長谷部崇、丸山桃奈)
うへ山の棚田は県内で唯一、「日本で最も美しい村」連合に加盟する小代区の代表的な景観。標高約450メートルの山あいに築かれた棚田は大小39枚、計3・1ヘクタールに及ぶ。
香美町によると、この10年で棚田を管理する農家3戸が高齢化で引退したが、地域グループ「俺たちの武勇田」が後を継ぎ、現役の7戸とともに景観を維持。2月には農林水産省が認定する「つなぐ棚田遺産」にも選ばれた。
大津市から訪れた男性(65)は「平地と違う環境で農家の人たちが苦労して手入れをし、美しい景観を保っているのは頭が下がる思い。水鏡の雲がほんのり赤く染まり、幻想的な光景を堪能できた」と話した。
同町の海岸では、夜に青白く輝く浜辺が見られる。
夜光虫は海にすむプランクトンの仲間で、直径1ミリ程度の原生生物。春に海水温が上昇すると発生し、昼間は赤潮として海を覆う。
波打ち際には夕暮れから写真愛好家らが訪れ、神秘的で柔らかな輝きを放つ水面を思い思いにシャッターを切っていた。
豊岡市の男性(61)もその一人。これまで何度も撮影してきたが、「今回は約15分間よく光ってくれていた。明るくて発光ダイオード(LED)のよう」と喜んだ。
