訪日外国人観光客(インバウンド)の受け入れ手続きが再開され、但馬地域でも迎え入れの準備が進む中、芸術文化観光専門職大学(兵庫県豊岡市山王町)の客員教授に就いたドイツ・ザクセン州のゲルリッツ大学のマティアス・フォークト教授(63)が来日し、但馬3市2町の観光資源の調査を始めた。(石川 翠)
専門職大は、学術拠点となる「芸術文化観光学研究推進センター(仮称)」の設立を準備しており、初回のプロジェクトとして、ドイツの文化政策やアートマネジメントをけん引してきたフォークト教授に、但馬各地の観光の可能性と課題を考察してもらうことにした。藤野一夫副学長(64)が取りまとめ、同大に各市町から派遣されている市職員も協力する。
フォークト教授は、学生への特別講義もしながら7月上旬まで滞在する。最終的に各市町と但馬全体の観光に関する考察を報告書にまとめる予定。新センターの設立に向けて報告書の知見を活用するとともに、各市町の観光振興策にも生かしてもらうという。
視察の初日は、豊岡市を巡回した。午前は出石町内の出石永楽館や家老屋敷などを見学、散策した。午後は神鍋高原に移動し、神鍋山の山頂で噴火口や眼下に広がる高原一帯を見渡しながら、日高神鍋観光協会の岡藤泰明会長(63)から、スキー客とともに民宿も減少している現状などを聞いた。
フォークト教授は「歴史的な建造物を維持するために多くの技術が用いられていることや、初めて見る植物もたくさんあった」と感想を述べた。一方で、地域の観光資源や植生に関する説明が少なく、「ガイド役がいないと分からない場面が多かった」と指摘。「ヨーロッパ人には観光によって教養を高めたいというニーズがあるので、その場で解説サイトに接続できるQRコードを設置するなどを検討してもいいかもしれない」と話していた。
