兵庫県豊岡市にゆかりのある東京大学と慶応義塾大学の学生らが結成した劇団「遊学生」が6~8日、芥川龍之介の短編小説をモチーフにしたオリジナル劇「地獄変」を、立光寺(豊岡市日高町江原)の本堂で上演する。伝統工芸の柳行李(ごうり)の職人が、大きな負担を伴いながら後世に継承していくことに自問自答する語りに心を打たれ、脚本を書き上げた。代表の東大4年の中谷勇輝さん(22)は「外から来た学生の目を通して、但馬の事柄を見るとどうなるのかをぜひ見てほしい」と話している。(石川 翠)
遊学生は、元文部科学副大臣の鈴木寛さんが両大学で主宰するゼミに所属する約15人の学生らでつくる。2020年秋に豊岡市内で開催された「豊岡演劇祭」に参加したことがきっかけで、「自分たちも豊岡で演劇をしたい」と発足した。
劇団名は、出石藩出身で東大初代総理(今の総長)の加藤弘之を補佐し、のちに自身も総長となる浜尾新が、「藩費遊学生」として慶応義塾で学んだ経緯に由来するという。
メンバーは豊岡を複数回訪れており、21年春には同市出石町の工房で柳行李職人に話を聞いた。材料や染料、道具などあらゆるものが手に入らなくなっており、昔は分業だった全工程の技術を一人で身に付けなければならない。「負担が増えている状況で、後世へ引き継ぐことが本当にいいことなのだろうか」と心の内を吐露する職人の語りが強く印象に残ったという。
その問いかけが、主人公の画家が仕事を続けることに悩む芥川の短編「地獄変」に通じるとして、小説を改作して独自に脚本を作り上げた。職人から見聞きしたことが直接的に表現されているわけではないが、「但馬から持ち帰った問いへの一つの『応答』」になるとする。
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8月中旬にも14人が豊岡市に滞在し、稽古や地域への宣伝などに励んだが、同市出身で東大2年の太田里沙さん(20)もメンバーの一人だ。偶然、同じ学生寮の先輩から地元との交流がある劇団のことを教わり、「みんなが地元をどのように見ているのか知りたい」と今年から参加。他のメンバーが観光スポットでもない場所を訪問するなど、「目の付けどころが違って面白い」という。
稽古合宿では議論も活発だった。登場人物が劇中である選択をするが、その意味などについて話し合われていたという。「舞台では根源のテーマが伝わるようにしたい」と力を込める。
約1時間。上演は6日と7日の午後7時半と、8日午後2時半の計3回。一般2千円、市民1500円、25歳以下千円。予約はチケット販売サイト「ピーティックス」か電話で。遊学生TEL050・5532・9184(午前11時~午後5時)
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