兵庫県豊岡市を中心に100以上の演目が発表される「豊岡演劇祭2022」が9月15~25日に開かれる。劇作家の平田オリザさん(豊岡市在住)が選んだ団体の演目などで構成される「公式プログラム」のポイントを7月下旬にお伝えしたが、今回は見どころ紹介の第2弾。自由度の高い公募型の「フリンジプログラム」について、注目される演目をプロデューサーの松岡大貴さんに聞いた。野外会場での上演や路上パフォーマンス、ワークショップ、ふらりと立ち寄れる展示などもあり、いろんな楽しみ方ができそうだ。前半(15~19日)と、後半(20~25日)の2回に分けてお届けする。(石川 翠)
出石町の城下町が舞台となるプイエイ「トゥデイ イン 出石」(16~19日・出石町内)は、参加者自身が台本に従って一帯を散策する「体験型まち歩き演劇」の趣向だ。「地元の人もいつもとは少し違う視点でまち歩きが楽しめる」という。
同じく出石町内で上演される坂口修一「リーディング公演 お父さんのバックドロップ」(15~17日・出石明治館)は、プロレス好きの教師が中島らもの同名短編小説を読み上げるとの設定。思わずプロレスの豆知識が飛び出すなど、「朗読だけど立ち上がって動き回るなど、熱血的な感じがおもしろい」。
NPO法人あしおとでつながろうプロジェクト「トゥ ノウ あなたが何かを知るために」(17、18日・日高文化体育館)は、2日間のワークショップを通して作り上げた作品を上演する。同法人はこれまで、アート体験を重ねてきた障害のある若者たちが先導する形で、参加者とともに即興の演劇作品を手がけてきた。「相手や自分の特性を知りながら、一つのものをともに作り上げる体験ができるのでは」とアピールする。
東日本大震災の発生直後に「地域を笑顔にしたい」と、仙台市在住の俳優によって結成された劇団短距離男道ミサイル。演劇祭で上演する「BNN」(15~18日・神鍋高原キャンプ場ファイヤーサークル)は「宮沢賢治の『飢餓陣営』をベースにしつつも、とてもコミカルなエンタメ系」という。
ほかに、松岡さんがワークショップで推奨するのが、渡邊のり子「とても小さな舞台美術をつくる」(17~19日・江原駅前サンロード一番街商店街)だ。作品名の通り、手のひらサイズの小さな箱にさまざまな素材を詰め込んで舞台を作る。
チケットはウェブか、フェスティバルセンターで購入する。
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週末は盛りだくさんで、17~19日の3連休には、城崎温泉街(午前10時~午後10時)や出石城周辺(午前11時半~午後2時)、JR江原駅前(午後6~10時)で、路上パフォーマンスや楽器演奏などが繰り広げられる。江原駅前ではナイトマーケットも同時開催される。
【フリンジプログラム】フリンジとは英語で「周辺」という意味で、主催者側が招待して上演してもらう公式プログラムに対し、公募制で審査を通過した団体によるプログラム。仏アビニョンなど海外の大規模な演劇祭では、審査などはなく、教会や納屋などの随所で自由に作品を発表し、活気を生み出している。
一方、演劇祭が定着していない日本では受け入れの環境が整っていないため、豊岡演劇祭では実行委員会が制作支援金の提供や会場とのマッチングなどで積極的に支援している。今年は149団体が応募し、選ばれた59団体が3部門に参加する。
具体的には、さまざまな会場で地域の文化や景色を生かした演目が見られる「セレクション」▽芸術文化観光専門職大学の小劇場で若手を中心に複数の団体が登場する「ショーケース」▽大道芸や演奏など路上パフォーマンスの「ストリート」-の三つ。
【特集ページ】豊岡演劇祭