兵庫県豊岡市を中心に開催される「豊岡演劇祭2022」(9月15~25日)では、各地で自由度の高い公募型の「フリンジプログラム」が繰り広げられる。野外会場での上演や路上パフォーマンス、ワークショップ、ふらりと立ち寄れる展示などがあり、初心者は目移りしそうだ。会期の前半(15~19日)に続き、後半(20~25日)についても、プロデューサーの松岡大貴さんに見どころを聞いた。(石川 翠)
神戸市長田区のNPO法人「ダンスボックス」のプロジェクトから生まれた団体、Mi-Mi-Bi from DANCE BOX(ミミビ フロム ダンスボックス)の「未だ見たことのない美しさ ~豊岡ver.~」(22、23日・市民プラザ)は、東京パラリンピックの開会式にも出演したダンサーの森田かずよさんが演出する。身体に障害のあるメンバーが「旅」をテーマにコンテンポラリーダンスを上演する。松岡さんは「注目度の高い演目」という。
豊岡市内で撮影された昔の写真や思い出話から作り上げられた一般社団法人毛帽子事務所「豊岡物語プロジェクト2022」(24、25日・同)は、プロから教わりながら市民が脚本を手がけた。「朗読も市民が但馬弁で行うので、地域ならではの物語になるはず」。
城崎温泉の芸者文化に着想を得たハイドロブラスト「最後の芸者たち」(24、25日・城崎国際アートセンター)は、昨年から実際に芸者の秀美さんから稽古を受け、取材を続けてきた映画監督の太田信吾さんらが手がける。
変わった手法で来場者を楽しませそうなのが、日坂春奈「そうめんによる上演」(23~25日・竹野のひととまる)だ。自身は料理家だが、2020年の演劇祭にも紙芝居パフォーマンスで参加した。今回は作品を上演した後に、但馬の食材を使ったそうめん料理のコースをふるまう。松岡さんは「唯一、作品を食べられる作品」と表現する。すでに満席になっている日もある。
チケットはウェブか、フェスティバルセンターで購入する。
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23~25日の3連休は、豊岡市役所前の広場周辺でナイトマーケットと路上パフォーマンスが同時に開催され、演劇祭終盤の盛り上がりを感じられる。午後6時~10時(24日は同5時半から)。
【フリンジプログラム】フリンジとは英語で「周辺」という意味で、主催者側が招待して上演してもらう公式プログラムに対し、公募制で審査を通過した団体によるプログラム。仏アビニョンなど海外の大規模な演劇祭では、審査などはなく、教会や納屋などの随所で自由に作品を発表し、活気を生み出している。
一方、演劇祭が定着していない日本では受け入れの環境が整っていないため、豊岡演劇祭では実行委員会が制作支援金の提供や会場とのマッチングなどで積極的に支援している。今年は149団体が応募し、選ばれた59団体が3部門に参加する。
具体的には、さまざまな会場で地域の文化や景色を生かした演目が見られる「セレクション」▽芸術文化観光専門職大学の小劇場で若手を中心に複数の団体が登場する「ショーケース」▽大道芸や演奏など路上パフォーマンスの「ストリート」-の三つ。
【特集ページ】豊岡演劇祭