但馬

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同時に3本のエスカレーターをかけ、性能などを調べられる研究施設=豊岡市日高町宵田
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同時に3本のエスカレーターをかけ、性能などを調べられる研究施設=豊岡市日高町宵田
組み立てられた後、動作の点検を受けるエスカレーター=豊岡市日高町宵田
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組み立てられた後、動作の点検を受けるエスカレーター=豊岡市日高町宵田
若手の意見交換も活発=豊岡市日高町宵田
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若手の意見交換も活発=豊岡市日高町宵田
ビッグステップの佐藤剛所長(左)とエスカレータ設計部技能コーチの渡邉雅也さん(左から2人目)ら=豊岡市日高町宵田
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ビッグステップの佐藤剛所長(左)とエスカレータ設計部技能コーチの渡邉雅也さん(左から2人目)ら=豊岡市日高町宵田
完成後、分割されて出荷されていくエスカレーター=豊岡市日高町宵田
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完成後、分割されて出荷されていくエスカレーター=豊岡市日高町宵田

 JR江原駅(兵庫県豊岡市日高町)の近くに、エレベーター・エスカレーター製造会社「フジテック」(滋賀県彦根市)の研究開発・生産拠点「ビッグステップ」がある。銀色に輝く、大きなかまぼこ形の建物から、国内外の各地に製品や技術が送り出されている。3月8日は、日本で初めてエスカレーターが試運転されたという「エスカレーターの日」。記念の日を前に工場内をのぞかせてもらうと、何ということでしょう! 匠(たくみ)の技で鋼材がみるみる形を変え、おなじみの「動く階段」が造られていたのです。

 フジテックは1948年に大阪で創業した。エレベーターとエスカレーター、「動く歩道」などを手がけ、23の国と地域に生産・営業拠点を置く。豊岡・日高では89年に工場を稼働。2010年に研究開発棟などを新築した。約4万平方メートルで110人が働いており、研究開発や製造に携わる。

 但馬地域では数こそ少ないが、豊岡市役所やJRの各駅、公立豊岡病院、JR豊岡駅前の商業施設「アイティ」など、目に触れるエレベーター、エスカレーターはいずれも同社製だ。県内ではほかにも神戸市の中央区役所や、22年5月に開院したはりま姫路総合医療センター(姫路市)にも納入実績があるという。

 エスカレーターは、人が乗る「ステップ」が長い輪のような形でつながり、鋼材の枠の中で回っているのが基本構造。同社はそれぞれの建物に合わせて、ステップの高さや角度、幅のほか、安全性能や持ち手の色など、顧客の要望に応じて受注生産する。一般的に分速30メートルで動くが、お年寄りも乗りやすいよう同20メートルに減速できたり、新型コロナウイルス禍では、感染予防で手すりを自動消毒できる機能も新たに備えたりしている。

■常に革新、常に今以上

 さっそく、ビッグステップの佐藤剛所長(52)らに工場の中を案内してもらった。まず目を引くのは、同時に3本のエスカレーターを性能評価できる「実験エリア」だ。長大な製品にも対応できる半地下の施設があり、安全性や耐久性などのテストが日々行われている。

 佐藤所長によると、工場では、部品を固定し加工しやすくする補助工具「治具(じぐ)」を工場オリジナルで開発している。エスカレーター製造の肝は「芯出し」と呼ばれる作業だ。基準点を決めて常に測定を繰り返し、部品をそれぞれ決まった位置に誤差なく取り付けることで、滑らかに動く製品になる。日本では極めて高い品質が求められるため、日本で開発した治具は、同社の海外工場でも通用する。

 20年からは治具についても特許を取得し始めた。毎年一つずつ増やすことが目標といい、佐藤所長は「常に革新、常に今以上を求める気概で仕事に臨んでいます」と胸を張る。

 また、エスカレーターも古い機材の更新や省エネ性能の向上など、日々変化を求められている。時には、図面にないようなトラブルも起こるが、設計に携わる渡邉雅也さん(44)は「工場と設置現場、どちらの人とも常に交流し、課題をやりとりして解決できた時の手応えはひとしお。自分のアイデアや考えが形になり、それが社会で形になるのがやりがい」と魅力を語る。

■123年前に米国で誕生、日本で7万台稼働

 フジテックによると、階段状の昇降装置であるエスカレーターは1900年、米国で初めて登場した。日本では14(大正3)年に東京・上野であった博覧会で試運転されたのが最初。国内では現在、約7万台が稼働し、年約2千台が新設されているという。

 同社は昇降装置メーカーの大手で、豊岡市と彦根市に生産と研究開発の拠点を構える。その一翼であるビッグステップには、同社を支える匠の技術がぎっしりと詰まる。

 ビッグステップでは休憩時間中、BGMに住宅のリノベーション(大規模改修)を扱ったテレビ番組のテーマ曲「TAKUMI/匠」が流れる。従業員らの選曲というが、鉄の板や小さな部品が加工されて、エスカレーターに形を変えていく様子は、まさに「なんということでしょう」だ。

 大切に組み立てられたエスカレーターは、工場内で実際に動かし、厳しい検査を合格した後、トラックの荷台に載る大きさに分割され、出荷されていく。一見同じに見えるが、自分たちの作った製品はすぐ分かるという。但馬発のエスカレーターは日夜、私たちの足元を支えてくれている。

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