神鍋高原（兵庫県豊岡市日高町）のホテルが、宿泊費を無料にする代わりに、業務の一部を手伝ってもらう人材を採用した。冬はスキー客、夏はスポーツ合宿の若者らでにぎわった同高原も、地元の宿泊施設は人手不足と新型コロナウイルス禍による集客減に直面。「旅人」と呼ぶ人材に地元の魅力を交流サイト（ＳＮＳ）で発信してもらい、求人難の解消と観光客の誘致につなげる。（丸山桃奈）

　神鍋高原には三つのスキー場があるが、少子化やコロナ禍、暖冬によるスキー客の減少のほか、観光従事者の高齢化と人手不足などが課題となっている。

　これらを解決しようと、観光振興を図る地域と旅人を橋渡しする新興企業「ＳＡＧＯＪＯ」（東京）が、「神鍋ハイランドホテル」（同市日高町太田）や地元の飲食店と連携。普段稼働していない客室１室を無料で提供する。

　旅人は滞在中、ホテル内の浴室清掃や食事の配膳などの業務を１日２～４時間手伝う。ホテルだけではなく、人手の足りない周辺の飲食店や農家などで調理の補助、接客、収穫などを手助けするとともに、仕事を通じた住民との交流や、地域の魅力などをＳＮＳでＰＲする。初回の滞在は最長５泊で、以後は同２９泊とする。双方が合意すれば、２９泊ごとに何度でも更新は可能だ。

　ＳＡＧＯＪＯは同様のマッチングを全国で展開しており、神鍋高原は全国で１６カ所目、県内では初めて。同社によると、２０～４０代を中心とした約２万５千人が旅人として登録しているという。

　１４日に旅人のお披露目があり、手芸作家の伊藤明子さん（３９）＝東京都＝が神鍋高原に滞在する１人目として紹介された。ホテルの窓ふきやシイタケの収穫などを担当した。伊藤さんは「知らない発見があるのは楽しく、神鍋での経験を発信していきたい」と話した。

　神鍋ハイランドホテルの中島丈裕総支配人は「人手や雪の不足など課題はあるが、われわれでは気づかない旅人の視点が入ることで、新たな宿泊プランの開発や後継者を見つけるきっかけになれば」と期待を寄せた。

　今後、神鍋高原内での滞在拠点を増やしていく予定という。