地元の有志でお披露目された奈佐節=豊岡市吉井
地元の有志でお披露目された奈佐節=豊岡市吉井

 豊岡市奈佐地区に伝わる風流踊りで、市の無形民俗文化財でもある「奈佐節」。人口減や地元小学校の閉校で存続の危機にひんしていたが、地元有志が2年前に「奈佐節伝承会」を立ち上げ、伝統をつないできた。そのお披露目会が、奈佐地区コミュニティセンター(豊岡市吉井)であり、地元住民ら20人が踊りやはやしを見守った。(吉田みなみ)

 奈佐節は1780(安永9)年、奈佐地区の一帯が冷害と大洪水に見舞われた時、復興の慰問のために訪れた京都・西本願寺の法如上人を歓迎するため、歌い踊ったとされる。昔は円山川下流域一帯の盆踊りとしても盛んだったが、戦争で踊り手が減り、自然消滅しかけていた。

 そんな中、奈佐節を残そうと地元で保存会が設立され、1995年には奈佐小学校に「奈佐節クラブ」ができた。地元有志らが児童に踊りや歌を教え、約30年間、公民館や老人ホームなどで踊ってきたが、児童の減少で同校は2021年春に閉校。再び担い手不足の問題が浮上した。

 区長会や有志らで話し合った結果、22年春に「奈佐節伝承会」を設立。奈佐節を広め、踊り継いでいくことを決めた。現在のメンバーは豊岡市内の10~80代の約30人。新型コロナウイルス禍で思うように集れず、活動が停滞した時期もあったが、お披露目会の日程を決め、約3カ月前から練習を重ねてきた。

 今月3日にあったお披露目会では、最初に奈佐節の歴史を紹介するために制作した紙芝居を上演。その後、船頭や鳥追い姿の踊り手が登場し、三味線や締太鼓の音、高らかに歌われる音頭に合わせて奈佐節を踊った。

 今後は年1回程度のペースで発表会を開くほか、小学校や幼稚園などで紙芝居を披露し、歴史などを広めていきたいという。小山幸雄会長(75)は「奈佐地区だけでなく、市内全域で盛り上げていきたい。伝承会のメンバーも募集しているので、興味のある人は1度練習を見に来て」と呼びかけた。