カラフルでモダンな器などが並ぶ展覧会場=兵庫陶芸美術館
カラフルでモダンな器などが並ぶ展覧会場=兵庫陶芸美術館

 「民芸」という言葉が誕生して100年の節目を記念した特別展「MINGEI ALIVE(ミンゲイ・アライブ)」が兵庫陶芸美術館(丹波篠山市今田町上立杭)で開かれている。同館と神戸新聞社の主催。民芸運動をリードした陶芸家・浜田庄司、河井寛次郎らの名品のほか、その精神を受け継ぐ現代作家・内田鋼一さん、市野雅彦さんらの器を出展。計約210点で、民芸の本質やエッセンスを、現代の視点から再考している。(堀井正純)

 大正末の1925年12月、宗教哲学者・柳宗悦らによって、民芸という言葉が生まれた。民芸とは「庶民の生活の中から生まれた、郷土的な工芸」(広辞苑)で、「民衆的工芸」を略した造語だ。

 本展を企画したマルテル坂本牧子学芸員は、民芸運動について、「日々の暮らしに寄り添うものに美を見いだすという新しい価値観、提案だった」と説明する。見過ごされていた日常の生活器具類に「美的価値」を発見した柳らの取り組みは当時革命的ともいえた。

 会場には、李氏朝鮮時代の朝鮮陶磁や「スリップウエア」と呼ばれる18世紀後半~19世紀前半の英国の器を並べ、観客に柳の美意識を伝える。民芸運動に深くかかわった浜田、河井、富本憲吉、バーナード・リーチらの陶磁器も、初期の民芸の精神、精髄について教えてくれる。

 本展の特色は、そうした「民芸らしい」作品だけでなく、民芸とは無関係とも思えるが、その精神・思想を継承した現代陶芸作家の器を出展している点だ。

 駒井正人さんの「土瓶」は一切の無駄をそぎ落としたシンプルなデザイン。日本の伝統的な要素を残しつつ、極めてモダンで美しい。田中雅文さんのカラフルな皿類や蚊やり器も、優しく柔らかなフォルムや色彩で見る人の心を弾ませる。

 共通するのは、手仕事の美や創造性か。「手仕事も、時代に応じて変わる。民芸の精神を正しく受け取り、新しいスタイルにあったモノづくりを導いていく。それが民芸が伝えたかったものだろう」と坂本学芸員は指摘している。本展は24日まで。最終日を除く月曜休館。一般1300円ほか。同館TEL079・597・3961