若泉敬氏
 若泉敬氏

 沖縄返還を目指す佐藤栄作首相(当時)の密使を務めた国際政治学者若泉敬氏(1930~96年)の遺書が11月、出身地の福井県に住む男性から沖縄県公文書館に寄贈され、一般公開が始まった。若泉氏は核兵器持ち込みに関する「密約」に関わり、遺書には責任を重く感じていたことを示す言葉がつづられている。男性は「何事も真剣に取り組む方だった。これを機に多くの人に先生を知ってもらいたい」と話す。

 若泉氏は現在の福井県越前市出身で、佐藤首相のブレーンだった。1972年の沖縄返還前、有事の際に沖縄への核兵器持ち込みを日本政府が認める密約に関わり94年発表の著書でその存在を明らかにした。

 「歎願状」と題した遺書は著書出版と同年、沖縄戦の組織的戦闘が終結したとされる6月23日付で沖縄県民と大田昌秀知事(当時)宛て。「私の重い『結果責任』を執り(中略)自裁します」「唯々申し訳無く存じ(中略)御詫びするに言葉がありません」と記されている。若泉氏はその2年後、66歳で亡くなった。

 遺書公開は今月28日まで。