◎今週の一推しイベント
【8日(土)】
▽「ユイマナカザト展-砂漠が語る宇宙と巨大ナマズの物語は衣服に宿るか-」(~16日、港区・東京シティビュー スカイギャラリー2)
パリのオートクチュールコレクションで発表を続ける日本唯一のブランド「ユイマナカザト」。デザイナー中里唯馬さんの作品が、六本木ヒルズで紹介されている。
レディー・ガガさんら著名人に舞台衣装を依頼され、世界の注目を集めた。森英恵さんに続く2人目の日本人として、2016年からパリ・オートクチュール組合の公式ゲストデザイナーに選ばれている。
流れるような模様のスーツ、うねるように大胆な動きを出したドレスなど、装飾性が際立つ作品がならぶ。中里さんは「機能性重視の時代、ファッションは大量消費と大量破棄を生み出した。この潮流にあえて逆行し、手間をかけて装飾を施すなど丁寧に作ることで、衣服が持つ物語性を表現したかった」と言う。
昨年はモーツァルト原作のオペラ「イドメネオ」の衣装を担当。この舞台から派生した24年春夏「UTAKATA」と同年秋冬「UNVEIL」のコレクションを、パリでのデビューから約10年となる活動の集大成として展示。胸元を陶器で飾った赤色の衣装群は壮麗だ。
25年春夏コレクション「FADE」は、昨秋旅したエジプトの白砂漠から発想を得た。砂漠と海の色合いを映し出した衣装を、中里さん撮影の写真や、デッサン画と共に紹介。衣服の背景に漂う世界観を構築している。
高校卒業後に学んだベルギー・アントワープ王立芸術アカデミーでは「教師が一人一人を導きながら、今の時代につくるべき服を共に探してくれた」と、与えられた教育の影響を振り返る。
社会の動きをとらえ創作することはデザイナーの使命でもあるという。「男女の垣根を越えて着られる作品を発表している。ファッションは現代アートにも似て、人々の価値観や内面に変化をもたらす。その可能性を感じてもらいたい」
同時開催中の「天空を纏う」展では羽生結弦さん着用の衣装3点を東京の景色をバックに展示。
○そのほかのお薦めイベント
【8日(土)】
▽「原田裕規個展 夢と影」(~3月1日、品川区・ANOMALY)
テクノロジーやパフォーマンス、リサーチを駆使して、社会や個人の本性に迫る作品をつくり出すアーティスト原田裕規さんの個展が、東品川で開かれている。
映像やプリント作品など12点を紹介。どれも、鑑賞者に作品への参加を促すメッセージとなっている。
2019年以降、断続的にハワイに滞在し、マウイ島のラハイナを拠点にリサーチ。23年8月にマウイ島で起きた大規模な山火事は、かつてのハワイ王国の都、ラハイナの市街地にまで広がり、100人以上の死者を出した。その3カ月後に発表した「ホーム・ポート」は、大火によって失われたラハイナの遠い未来と過去をイメージして制作したデジタル・ランドスケープ作品だ。デジタルとプリントの作品が会場のメイン空間に展開され、復興への願いが静かに漂う。
原田さんは「コロナ禍以降にデジタル上で流行している風景表現『ドリームスケープ』から着想を得た。気候変動や戦争、ウイルスが存在しないかのような非現実的な安心感を与える表現法に、実際の悲劇を反映させた。現地の友人や知人、被災者に対する繊細な思いを込めている」と話す。
最新作「光庭(ひかりにわ)」は、黒川紀章さん設計の広島市現代美術館内をモデルにした部屋を描いた。空想上の海辺に開かれた場所に椅子が置かれ、その先には爆心地がある。見る者を椅子に座っている気持ちにさせる“演劇性”のある作品だ。「夢のように差し込む長い影は、20世紀の米国を代表する画家エドワード・ホッパーの作品を参照した。原爆と米国は切り離せない関係。影の先に見えるのが不穏な、あるいは、希望ある未来なのかは鑑賞者の想像に委ねたい」
2月9日まで広島市現代美術館で大規模個展「原田裕規:ホーム・ポート」を開催。
▽「北海道地チーズ博2025」(~12日、渋谷区)
北海道の約300種類のチーズを紹介するイベントが、表参道ヒルズで開催される。
道内ならではの気候風土で生まれた、個性豊かな“地チーズ”を製造する50社の製品がならぶ。会場で生産者と対話しながら、チーズの魅力や奥深さを実感できる。
為替の影響もありフランスやイタリア産チーズの価格が高騰する中で、無理せずにおいしい国内産チーズを購入できるのも魅力。ヒルズ内のレストラン4店舗では特別コラボメニューを用意する。「ワインショップ・エノテカ&バー」の店長・石樵友紀さんは「日本人好みのくせのない北海道チーズと、エレガントな味わいの欧州ワインのペアリングは相性がよい。気軽に立ち寄ってほしい」と話した。
▽「ボーム カフェ」(~3月9日、事前予約制、中央区)
スイスの老舗時計ブランド「ボーム&メルシエ」とコラボレーションしたカフェが、日本橋の「マンダリン オリエンタル東京」で開かれる。 スイスのケーキ“キルシュトルテ”からヒントを得た、透き通るレッドカラーのカクテル「クラシマ」などを提供。ブランドを代表する腕時計も展示される。この場所ならではの優雅なひとときを味わえるだろう。
▽「世界らん展2025-花と緑の祭典-」(~12日、文京区)
国内最大のランの祭典が、後楽の東京ドームシティで開かれている。
35周年を迎える今年は、千種類以上、100万輪のランが会場を彩る。一足早く春の香りを感じたい。