内閣府が発表した2023年4~6月期の実質国内総生産(GDP、速報値)は、前期比1・5%増、年率換算で6・0%増だった。事前の市場予想3%程度を大きく上回り、3四半期連続のプラスとなった。金額では590・7兆円と過去最高を記録した。

 数字だけを見れば、驚くべき高成長である。だが、実感を持てない人は多いだろう。それもそのはず、個人消費などの国内需要(内需)は依然振るわず、海外需要(外需)が一時的に伸びたからだ。

 自動車の輸出と、「サービスの輸出」に区分されるインバウンド(訪日客)の消費が増えた。加えて、内需の弱さに起因する輸入の減少も、GDPの算出ではプラスに作用した。今回の成長は「見せかけ」の面がある。

 日本経済は海外景気に大きく左右され、力強さを欠いている。外需頼みから脱し、内需主導の成長へ向け、官民の一層の努力が求められる。

 最優先で取り組むべきは、物価高に負けない持続的な賃上げだ。

 GDPの6割近くを占める個人消費は今回、前期比0・5%減だった。新型コロナウイルスの5類移行を背景に外食や宿泊は伸びたものの、全体としては3四半期ぶりにマイナスに転じた。賃金などを示す「雇用者報酬」の実質値は、前年同期比で減少し続けている。賃上げが物価上昇に追いつかず、家計が苦しくなり続けている状況だ。

 最低賃金の23年度改定では、時給が全国平均で43円増の1004円となった。兵庫県は41円増の1001円で決着した。10月以降に適用される。増額されるとはいえ、フルタイムで働いても安定した暮らしには依然ほど遠い。

 賃金上昇の裾野を広げるためにも、政府は中小や小規模事業者が賃上げしやすい環境整備に力を入れねばならない。

 内需の柱の一つである民間の設備投資は、前期比0・0%増と横ばいだった。デジタル化や脱炭素などをにらみ、23年度中に設備投資を計画する企業は多い。好業績の会社は率先して資金を投じ、収益力に磨きをかけてもらいたい。

 一方、輸出にも懸念材料が出てきた。中国では、不動産市況の悪化で景気回復の失速感が強まっている。インフレ抑制で利上げを続ける米国は、今年後半には景気後退に陥る可能性が指摘される。世界経済への影響に警戒が必要だ。

 内需か外需かにかかわらず、人手不足が成長のネックになりつつある。モノやサービスの付加価値を高め、働く人の生産性を上げる取り組みを加速せねばならない。