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 サッカー女子WEリーグでINAC神戸レオネッサが首位争いを続けている。18日に今季初黒星を喫したが10勝4分け1敗の勝ち点34で2位と好位置に付けており、逆転でのリーグ制覇に期待がかかる。

 INAC神戸は2001年に設立された。エースとして日本の11年女子ワールドカップ(W杯)優勝に貢献した澤穂希(ほまれ)さんら多くの日本代表がプレーし、21年に始まったWEリーグでは初代女王の座に就いた。1月27日に決勝があった皇后杯全日本女子選手権で7度目の優勝を飾るなど、数々のタイトルを獲得してきた。

 驚かされたのは、2月に発表された運営会社の交代だ。創設時からの経営者が健康不安などを理由に挙げ、産業廃棄物処理やリサイクル事業などを手がける大栄環境(神戸市)に経営権を譲渡した。

 シーズン途中の交代は異例だが、チーム名も本拠地も変わらず、監督も選手も残留となったことで、サポーターは胸をなでおろしただろう。

 経営母体が変わってもクラブは引き継がれるJリーグと異なり、観客数が多くない女子サッカーでは、母体が変わればクラブが吸収されたり消滅したりする例が少なくない。

 今回の譲渡先探しでは「地域に根ざしたクラブ」を第一にし、最終的に地元のみなと銀行が仲介にあたったという。女子サッカーのプロチームが存続する道を描くとともに、中小企業の事業承継が地域に果たす役割を示した意味合いは大きい。

 昨年、創設29年目でJリーグ1部(J1)初優勝を果たしたヴィッセル神戸のように、地元のプロスポーツチームの躍進は地域の活力醸成につながる。新体制となったINACには競技の面白さを地域に根付かせる取り組みが求められる。

 サッカーの女子日本代表「なでしこジャパン」は、この夏に行われるパリオリンピックへの出場を決めており、女子サッカーへの注目度は今後、さらに高まるだろう。

 神戸のクラブとして新たに歴史を刻み始めたINACに力を与えるためにも、多くの市民に会場へ足を運んでもらい選手たちに熱い声援を送ってほしい。