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 全国各地で農作物の高温障害が相次いでいる。兵庫県内でも近年、水稲をはじめ丹波黒大豆、ブドウやナシなど影響は広範囲に及ぶ。今夏は、観測史上最も高い平均気温を記録した昨夏に匹敵する猛暑が予想されており、警戒が必要だ。

 農業生産は、気候変動の影響を受けやすい。温暖化は地球規模で進み、高温障害が一過性でないのは明白だ。農家だけで打てる手は限られ、国や都道府県、生産者団体が連携して対応を急がねばならない。

 昨夏の高温障害について農林水産省がまとめたレポートによると、水稲は大半の地域で1等米比率が低下した。リンゴやブドウ、ナシなどの果物をはじめ、花、乳用牛など、幅広い農産物で品質・収量低下、病・虫害に見舞われた。

 効果のあった対策で、直ちに取り組めるのは遮光資材の活用やかん水管理などだ。各地で積極的に採り入れる必要がある。

 水稲では高温耐性品種の導入・転換も挙がった。主食用米の作付面積に占める耐性品種の割合は14・7%に上り、2019年から4・8ポイント増えた。

 ブランド米の産地では、品種置き換えへの抵抗感も少なくないだろう。しかし全国有数の米どころの新潟県では、暑さに弱いコシヒカリの1等米比率が5%にまで落ち込んでいる。

 気候変動への耐性とともに品質を高める研究も進んでおり、品質や収量の低下が避けられないなら新品種に置き換えるとともに、改めて産地全体でブランドをアピールしてほしい。

 地域を代表する農産物が高温障害で打撃を受けると、その影響は農業にとどまらず、文化や景観、観光などにも及ぶ。

 山形県では今年、サクランボが歴史的な凶作となる見通しで、JA山形中央会は、スプリンクラーなどの暑さ対策の設備導入や、高温に強い品種開発などへの支援を県に緊急要請した。

 兵庫県も山田錦や丹波黒、イチジク、タマネギなど、地域に根差した多くのブランド産物を擁する。丹波黒では暑さに強い新品種の普及に向けた取り組みが始まった。品種改良は一朝一夕には進められないだけに、さらなる高温化を念頭に、備えを固めたい。