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 今月に入り株価の乱高下が止まらない。日経平均株価(225種)の終値は5日に前週末比4451円安と過去最大の下落となったが、翌日は一転、前日比3217円高と史上最大の上昇を記録した。その後も1日の取引時間中に千円近くも値が動く、ジェットコースターのような展開が続いている。

 株価は経済の体温計と例えられるが、実体経済が短期間にこれだけ急変したわけではない。環境変化に投資家が過剰に反応し、売り買いを増幅させた結果とみていい。

 今年1月に導入された新しい少額投資非課税制度(NISA)で投資を始めた人には手痛い洗礼となったが、市場の混乱が長く続くとは考えにくく、冷静に対応してほしい。

 今回の乱高下の端緒となったのは、追加利上げを決めた7月30日の日銀政策決定会合だ。植田和男総裁はさらなる利上げにも言及した。そこへ米FRB(連邦準備制度理事会)の利下げや景気指標の悪化で米国経済の減速懸念が強まり、米国株が大幅下落したのを受けて5日の日本株の急落を招いた。

 日銀の利上げは市場の予想外で、投資家を動揺させた点は否めない。7日に内田真一副総裁が「市場が不安定な状況で利上げはしない」と慎重な発言をしたのは、沈静化を図る意図がうかがえる。

 一方で、日米ともにこのところの株価は実体経済の動きとかけ離れ、生成AI(人工知能)の発展を当て込む半導体株を中心に急上昇が続いていた。期待が先行した分、反動も強まったといえる。

 重要なのは、投資家が目先の動きに一喜一憂せず、持続的な株価上昇を見込めるような経済状況を構築することだ。

 物価上昇を差し引いた6月の実質賃金は27カ月ぶりに前年比プラスに転じた。最低賃金引き上げへの議論も進む。消費を勢いづけるとともに、企業の競争力も高める必要がある。

 政府は、新NISAなどの税優遇で「貯蓄から投資へ」とさかんに促している。しかし、将来の株価上昇に結びつく経済戦略を並行して練り上げなければ、国民の投資意欲は容易に高まらないだろう。