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 原発の使用済み核燃料を一時保管する青森県むつ市の中間貯蔵施設に関して、県と市、施設の事業者が安全協定を結んだ。協定の締結は燃料搬入の前提となり、9月にも東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)から使用済み核燃料が搬入される。2005年の立地決定から20年近くが過ぎた今も、地元には反対の声がある。国内で初めてとなる原発敷地外での中間貯蔵は、住民の理解を十分に得られないままで実施される。

 使用済み燃料は高熱を出すため、原発内ではプールで保管する。電源を喪失し冷却できなくなれば、東電福島第1原発のように事故を起こしかねない。むつ市の中間貯蔵施設は乾式貯蔵を行う。金属製容器に入れた燃料を屋内で自然冷却する。

 事業者に出資する東電と日本原子力発電から受け入れ、建屋2棟で計5千トンを保管するという。

 国内の原発内には合計約1万6700トンの使用済み燃料がたまっている。柏崎刈羽原発はプールの8割以上が埋まり、再稼働を目指す6、7号機は9割を超える。中間貯蔵に移せず、プールが満杯になれば運転できなくなる可能性もあった。

 関西電力の美浜、大飯、高浜原発(福井県)などの使用済み燃料も保管スペースの8割を超えている。関電は中国電力と共同して山口県上関町に中間貯蔵施設の建設を目指しているが、地元の反発もあり先行きは見通せない。原発稼働は綱渡りの状態にあると言わざるを得ない。

 むつ市での中間貯蔵を巡り、地元が懸念するのは、協定に明記された「最長50年間」の保管期限が本当に守られるかどうかである。

 中間貯蔵は、国が政策として進める「核燃料サイクル」を前提としている。使用済み燃料を再処理工場で化学処理し、混合酸化物(MOX)燃料にして再利用する。

 ところが再処理工場は、設備トラブルなどで着工から30年以上が過ぎても完成していない。MOX燃料を使うプルサーマル原発は拡大せず、再処理の過程で出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場も選定中だ。住民から「中間貯蔵ではなく最終貯蔵になるのでは」との疑念が出てくるのも無理はない。

 今回、核燃料サイクル政策の中止なども視野に、中間貯蔵が困難な状況になった場合は「燃料の搬出を含め、速やかに適切な措置を講ずる」との覚書を関係者が結んだ。だがそれもまた容易なことではない。

 政府は原発の「最大限活用」を掲げる。しかし再利用も最終処分も定まらない中で、使用済み燃料を増やし続けるのは無責任のそしりを免れない。まず、可能な限り原発への依存度を低減すべきだ。