パリ・パラリンピックが28日(日本時間29日)に開幕した。パリでの夏季五輪は3回目を数えたが、パラリンピックは初開催となる。
パラリンピックは、障害者スポーツを通じ、インクルーシブ(分け隔てのない、包摂的)な社会を目指す国際競技大会である。選手たちは困難があってもあきらめず、自らの限界に挑戦する。パリ五輪と同じスローガン「広く開かれた大会に」の言葉通り、誰にとっても平等で公平な運営を期待したい。
2021年の東京パラリンピックは新型コロナウイルス禍による緊急事態宣言の中で開かれ、原則無観客で実施された。今回、選手は多くの人たちの前で競技に挑むことができる。会場が一体となった盛り上がりが各競技で見られるだろう。
競技は五輪と同様、ベルサイユ宮殿、グラン・パレなどパリの観光名所や歴史的建造物を活用した会場である。開会式も史上初めて競技場の外で開かれた。選手らはシャンゼリゼ通りを進み、コンコルド広場での式典に臨んだ。華やかなパリの街が大会全体を彩るに違いない。
参加国・地域数は、難民選手団を含めて168と過去最多になり、女子選手の比率も過去最高の45%に達したという。計約4400人が22競技、549種目に挑む。選手の出場機会が拡大した点は喜ばしい。
日本選手は175人が代表入りした。海外開催のパラリンピックでは2004年アテネ大会の163人を上回り、過去最多となる。車いすテニスには、明石市出身で東京大会銀メダリストの上地(かみじ)結衣選手、金メダルを狙う18歳の小田凱人(ときと)選手らが出場する。ボッチャや車いすラグビーのチームなども頂点を目指す。
今年5月に神戸で開催された世界パラ陸上競技選手権大会で活躍した選手たちも、パリで躍動する。神戸で銀メダルだった男子車いすの佐藤友祈(ともき)選手は東京大会からの2連覇に挑む。それぞれの選手が持てる力を存分に発揮してほしい。
残念なのは、昨秋の国連総会で五輪・パラリンピックでの休戦決議を採択したにもかかわらず、ウクライナやパレスチナ自治区ガザなどで戦火が続いていることだ。五輪・パラが真の平和の祭典になっていない事実を重く受け止め、大会を平和について考える場にしたい。
パラリンピックは多様性を尊重し合い、誰もが能力や個性を発揮できる場である。大会では勇気、強い意志、インスピレーション、公平-という四つの価値を重視する。社会の側にある障壁(バリアー)を取り除き、共生社会を実現させるために、大会の理念をパリから世界に向けて強く発信してもらいたい。