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 きょうは「防災の日」だ。一人一人が災害列島に暮らしていることを自覚し、身の回りの備えを再確認したい。

 今年は能登半島や宮崎県沖の日向灘などで大きな地震が相次いだ。日向灘地震の震源地は南海トラフ地震の想定震源域内だったことから、政府は運用開始後初となる「巨大地震注意」の臨時情報を発表した。

 近年、地震以上に身近な脅威となっているのが水害だ。山形県や秋田県では7月、記録的な大雨で河川氾濫や浸水の被害が発生し、死傷者が出た。

 現在も台風10号が九州などで暴風雨をもたらし、大きな爪痕を残している。速度が遅く長時間にわたり同じ場所が雨風を受けるため、土砂災害などの危険が高まる。積乱雲を次々と発生させ局地的に猛烈な雨を降らせ続ける「線状降水帯」も兵庫県などで頻発した。台風から離れた地域でも大雨となり、愛知県では土砂崩れが起きて家族5人が巻き込まれた。

 地球温暖化などで、「数十年に一度」とされる雨が毎年のようにどこかで降っている。より強力な台風が増え、被害の激甚化が懸念される。これまでの経験にとらわれず、防災・減災対策を見直す必要がある。

 15年前の兵庫県西・北部豪雨で甚大な被害があった佐用町の水害では、道路が水没する状況で、夜間に避難所に向かう住民が濁流に流された。避難の在り方が問われ、浸水の恐れのない2階以上への「垂直避難」も奨励される契機となった。

 しかし、その後の災害でも逃げ遅れた人が犠牲になる惨事が後を絶たない。避難情報が出ても、すぐに行動に移す人はまだまだ少ない。

 自治体は「空振り」を恐れず、早めに避難所を設け、住民に安全確保を促さねばならない。住民の側も、自宅や周辺の浸水域や水深を予想するハザードマップを確認してほしい。災害時の個人や家族の役割を時系列で決めておく「マイ・タイムライン」も避難行動の参考になる。

 台風シーズンは続く。被害はゼロにできなくても減らすことはできる。行政の対応には限界があることを認識し、先手先手で自ら命を守る地域主体の防災への意識を高めたい。