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 兵庫県内の多くの学校で、きょうから2学期が始まる。夏休みの楽しい思い出を胸に元気に登校する児童・生徒もいれば、ゆううつで気力がわかない子もいるだろう。

 学校が再開するこの時期、子どもの様子に普段と変わったところはないか、周りの大人が目を配り、気になる点があれば「しんどいの?」などと声をかけるよう努めたい。

 例えば、こんな異変はないだろうか。朝起きるのがつらそう、食欲がない、自分を責める発言が増えた-。悩みを抱え、心のSOSを発している可能性があり、まずは周囲が気づくことが大切だ。登校が苦痛なら、無理をさせずに「休むのも大事」と伝えてほしい。

 長期の休み明けは、子どもの不登校や自傷行為、自殺が増える傾向があるとされる。厚生労働省によると、2023年に自ら命を絶った小中高生は513人に上る。過去最多だった22年の514人とほぼ変わらず、極めて深刻な事態が続く。

 こども家庭庁の分析では、19年4月~23年末の約5年間に自殺した小中高生のうち、21%は周囲が様子の変化や心身の不調に気づいていなかった。44%の児童・生徒は自殺の直前まで変わりなく学校に出席していた。異変をキャッチすることの難しさがうかがえる。

 教育現場の危機感は強い。8月、県内の公立高校で教員向けに「ゲートキーパー」の研修が行われた。ゲートキーパーは「命の門番」と呼ばれ、悩んでいる人に気づき、話を聞いて必要な支援につなげる人のことである。特別な資格ではなく、兵庫県や県内の自治体が自殺予防の一環で養成講座を開いている。

 教員らは、つらさを抱える生徒の特徴や、「否定せず、相手を正そうとしない」などの心構えをロールプレーを通して学んだ。講師を務めたNPO法人「ゲートキーパー支援センター」(伊丹市)の竹内志津香理事長は「先生が1人で抱え込むのではなく、保護者や行政の福祉部門など学校内外のチームで対応することが大切」と話す。

 国は昨年、子どもの自殺防止対策の緊急強化プランをまとめた。専門家による危機対応チームを都道府県に設けることや、子ども1人に1台配布しているタブレット端末を活用して自殺のリスクを早期に把握することなどを盛り込んだ。子どもの視点に立ち、関係機関が連携して実効性を高めることが重要だ。

 子どもたちには、信頼できる大人や友人にしんどい気持ちを打ち明けてもいいんだよと伝えたい。公的機関やNPO法人などさまざまな相談窓口もある。学校や家庭などで、そのことを知らせてもらいたい。