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 立憲民主党の代表選がきのう告示され、野田佳彦元首相、枝野幸男前代表、泉健太代表、当選1回の吉田晴美衆院議員の4人が立候補を届け出た。国会・地方議員や党員らの投票で23日に新代表が決まる。

 自民党派閥の裏金事件を受けて政権に厳しい目が注がれる中、野党第1党のトップは政権交代を目指す「顔」となる。具体的な戦略と政策を論じ、政権担当能力を示さねばならない。

 ただ、その顔ぶれは刷新感に乏しいと言わざるを得ない。

 野田氏は民主党政権の首相だった2012年、不利な情勢下で衆院解散に踏み切り自民党の政権復帰を許した。立民を結党した枝野氏は21年衆院選で敗北し、代表を引責辞任した。負の記憶を払拭し、豊富な経験を生かした安定感と政治手腕への期待に応えられるかが課題だ。

 泉氏は現職ながら推薦人20人の確保に告示直前まで苦しんだ。21年の就任時は批判一辺倒でない「政策提案型」を掲げたが翌年の参院選で敗れ、従来の政権追及型に回帰した。この3年で党勢は回復せず実績は乏しいとも指摘される。自らの党運営を厳しく総括し、改革をどう進めるかを語るべきだ。

 吉田氏は、立候補を模索していた江田憲司元代表代行との一本化調整が成立した。「永田町の常識を変える」との言葉通り、若者や女性など政治との距離を感じている人たちに響く論戦を挑んでもらいたい。

 立民の政党支持率は8月の共同通信世論調査で12・3%と、逆風下にある自民の36・7%にまだ水をあけられている。政権交代への道は険しい。

 野党間連携の在り方が焦点となる。支持母体・連合を介した国民民主党との選挙協力にとどまらず、野党第2党の日本維新の会や自民に批判的な保守層も視野に入れ、幅広い結集軸を構築できるかが問われる。

 安全保障や原発・エネルギー、憲法といった基本政策での立ち位置を明確にした上で、ジェンダー平等や分配重視の経済政策など現政権に代わる選択肢をアピールする必要がある。

 政治に緊張感をもたらす野党の役割は大きい。政治は変えられる、と国民が希望を持てる代表選にしなければならない。